(懐かしいLDより;レヴァイン・ポネルによる「テイト帝の慈悲」K.621)
12-11-3、ジェームズ・レヴァイン指揮、ジャン=ピエール・ポネル演出とウイーンフイルによる「皇帝テイトの慈悲」.K.621、
映像ローマ(1980)、音声ウイーン(1980)、

−ローマの物語を印象づける遺跡の中での、ローマの貴族たちに扮した登場人物6人が、互いのぎらぎらする人間関係をお互いにぶつけ合った迫力ある歌と演技が最後まで続き、素晴らしい迫真の物語が続けられたと思う。これは舞台を離れた唯一の映画による映像であり、その意味では最もユニークな映像であった。この映像は私にとってはこのオペラの最初の映像だったので、最初の舞台として新鮮に頭に刷り込まれていたのであるが、今回改めて見直して見ても、やはりレヴァインの音楽には説得力があり、ポネルが考えたようにローマの遺跡を背景にすることによって、非常にイメージしやすい分かりやすい映像になっていると改めて感じさせられた−

(懐かしいLDより;レヴァイン・ポネルによる「テイト帝の慈悲」K.621)
12-11-3、ジェームズ・レヴァイン指揮、ジャン=ピエール・ポネル演出とウイーンフイルによる「皇帝テイトの慈悲」.K.621、映像ローマ(1980)、音声ウイーン(1980)、
(配役)テイト;エリック・タデイ、セスト;タチアーナ・トロヤノス、ヴィテッリア;キャロル・ネブレット、アンニオ;アン・ハウエルズ、セルヴィリア;キャサリン・マルフィターノ、プブリオ;クルド・リドル、
(1985年5月、グラモフォンLD、WOOZ-24024〜5、UNITEL-DVD UCBG-1168)

          11月号の第三曲目は、初期のレーザーデイスクではかなり話題を呼んだレヴァイン・ポネルによる「皇帝テイトの慈悲」K.621であるが、その話題とはこのオペラの最初の映像で注目されたことと、演奏の録音はウイーンで行い、映像は演出家のポネルがローマの遺跡を利用して、映画風に現地で撮影した映像であったからである。この映像は、私にはこのオペラを映像で見る最初の機会を与えてくれたLDで、強く印象に残っている。それはこの映像は、舞台ではなく映画方式であったが、古代ローマの遺跡を背景にしたイメージし易い映像であり、女性歌手陣も良く区別がついて、今は亡きトロヤノスがセストを演じているなど、やはりオペラはCDを脱して映像や舞台でなければ、基本的なところが理解できないと感じさせたものであった。
このオペラは、これまでにアップロードしてきた三作品が、いずれも現代風な演出であり、登場人物たちの人間関係を描き出すことに焦点を当てたものになっているが、今回久しぶりで改めてこの映像を見て、どう言う印象を持つか楽しみにしている。



画面が始まると、ローマのテイト帝の凱旋門の遺跡を背景に序曲が開始され、字幕でオペラの出演者たちの紹介が画面に現れた後、テイト帝のタピーの悩む姿がローマの先人たちの遺跡の前で写されており、彼が先人たちの要請を受け入れ、愛する異教徒のベレニーチェ妃を王妃に迎えることを断念した苦しい姿が描かれていた。オーケストラの姿は映像に現れないままに序曲は終了したが、皇帝テイトの悩みとローマの先人たちとの戦いは既に始まっていることを、この序曲は物語っていた。



場面は破壊された城址の前庭でヴィッテリアとセストの言い争いのレチタテーボが開始され、先王の娘であるヴィッテリアがセストを口先ばかりと頻りに責めていた。彼女は自分に思いを寄せているセストを利用して、自分に王妃の座を与えないテイトに対し復讐を計画していたが、テイトの側近でもあり仲良しのセストは実行しないので苛立っていた。しかし、最後には、彼女が大好きで逆らえないセストは、「あなたのためなら何でもやる」と第一曲を歌い出し、やがて二人がそれぞれの思いを語る二重唱となって、セストは彼女からナイフを受け取っていた。



そこへテイトの側近の一人のアンニオが登場し、「テイトがベレニーチェ妃との結婚を諦めたようだ」と二人に告げ、セストがテイトに呼ばれていると告げていた。ヴィッテリアはそれを聞いて直ちにセストに暗殺の中止を伝え、望みが出てきたと第二曲の激しいコロラチューラのアリアを歌い出した。恋人の言いなりにならざるを得ないセストの姿と対照的に、ふてぶてしさを漲らせた傲慢な嫉妬深い女性の姿が見え隠れしていた。後半のアレグロではドラマティックな歌唱力を見せていた。続いて弟分のアンニオはセストの妹セルヴィリアとの結婚の許可をセストからテイトに誓願してくれと頼み、お互いの二人の友情を誓い合う第三曲の小二重唱が歌われ、これは短いながら民謡風の素晴らしい曲に聞こえた。





          場面が変わりトランペットによるファンファーレが鳴り響き行進曲が始まって、皇帝の居室には側近たちが集まってきており、続いて皇帝を讃える民衆たちの合唱が続いていた。「ローマの運命は、神々が守り給う。テイト帝の正義と力でわれわれの名誉を守り給え」と合唱が続いていた。





           テイト帝はセストとアンニオを前にして、「心ならずもベレニーチェの王妃はローマのために断念した。王妃はローマ人の身内から選びたい」と言い、セストに妹のセルヴィリアを妃に迎えたいがどうかと告げたので、二人は仰天した。セストはアンニオに約束しているので答えられないが、一方のアンニオは皇帝の命令なので、逆らえずにセルヴィリアを誉めてしまうので、テイト帝は丁度良いとアンニオに、セルヴィリアに伝えるよう命じてしまう。





           アンニオが愛するセルヴィリアにお妃だと伝える苦しみと、彼女の驚きと苦悩に満ちた第七曲の愛の二重唱は木管のオブリガートを伴って実に美しいが、二人の愛の深さを確かめ合う二重唱になっていた。行動力のあるセルヴィリアはテイトのところに駆けつけてご命令なら従いますが「私の心はアンニオのもの」と告白した。テイトは意に従わぬのは罪だが彼女の正直な心を誉め、皆がこれほど正直で忠誠ならと第8番のアリアで「王座の周りの全てのものの心が誠実なら」と歌い出して、正直な彼女を許していた。





           ヴィッテリアは、次にセルヴィリアが王妃に選ばれたと知って嫉妬の余り腹を立て、セストに、私を好きならテイトを殺して王座をと再び唆し、「即刻行ってカンピドーリオの丘に火をつけよ」と命じていた。テイトへの友情が強いセストは、その苦しみを第9番の前半のアダージョで歌うが、ヴィッテリアの執拗な命令に逆らえず、クラリネットの悲しげなオブリガートとともに、遂に「命令通り、私は行きます」とアレグロで強く歌い上げ、最後には「私は戻って来ます」とコロラチューラの素晴らしい大アリアに発展していた。





            セストを見送ったセルヴィリアが「テイト、私だって綺麗でしょ」と独り言を言っている所に、プブリオとアンニオが駆けつけ、「陛下がお呼びです。皇后さまです。」と告げた。ヴィッテリアは「参ります」と驚くが、直ぐにセストは?と大騒ぎし、もう手遅れだと混乱するヴィッテリアのソロと、喜びを伝える二人の男たちとの三重唱が奇妙な対象を示す面白いアンサンブルとなっていた。続いて、迷い苦しみながらカンピドーリオに放火をし、遂に人を刺してしまったセストが凱旋門にたどり着き、必死の形相で伴奏付きのレチタテイーボで裏切行為を心から悔やんでいたが、時既に遅く遠くの丘では炎が上がっていた。






                         セストが「守り給え、神々よ」と歌い出した所でフィナーレが始まり、セストを追ってアンニオが駆けつけ、セルヴィリアが火を見て驚き、プブリオも誰が裏切ったかと騒いで、フィナーレの五重唱の合唱が始まっていた。火の煙の中を人々が逃げ惑い、プブリオは犯人を探していたが、ヴィッテリアはセストを見つけて「絶対しゃべらないで」と念を押していた。裏切りだと騒ぐ全員の悲しみの日の合唱が続き、最後には遠くで爆発が起こって広場は暗闇になり、混乱の中で第一幕が終了した。




          場外の広場で第二幕が直ちに始まり、アンニオは逃亡しようとしていたセストに出合って「セスト、皇帝は死にはしなかった」と告げていた。そして、恐ろしさと後悔で動転していたセストに、「テイトに戻れ、悔いを示せ。」と諭しながら、第二幕の冒頭のアリアを歌いだした。逃げようとするセストはヴィッテリアに合い、「逃げて」と言う彼女に別れを告げ「君の憐れみが欲しいんだ」と歌い出し、ヴィッテリアの後悔と不安な気持ちとの二重唱となり、続いて二人を見つけセストを逮捕しようとするプブリオとの複雑な第14曲の三重唱となって、最後にはセストは「今でも慕っています」と彼女に語りつつ、プブリオに遂に連行されてしまっていた。




           場面が変わり王宮の広場で「テイトは助かった。王宮は救われた。」と神に感謝する第15曲の民衆の合唱が始まった。この曲の中間部ではテイトのソロが入り「私は不幸ではない」と歌われていた。プブリオはテイトにセストの犯行を提訴するが、テイトは信じない。プブリオが「不実を知らぬ純粋な人は、裏切りに気付かないのです」とアリアを歌い出し、テイトに進言をした。そこに現れたアンニオの話にも耳を貸さぬテイトは、元老院の判決文に署名する前にセストに合おうと大声を出して命じていた。







           アンニオはそこで「セストは死に値するが、心の声に従うように私たちにお慈悲を下さい」と第17番のアリアを歌い、テイトに直訴していた。テイトはアンニオの資料で初めて親友の裏切行為の事実を知り、犯罪者は死ぬのだと悟っていたが、署名する前に本人に確かめようとしていた。そこへプブリオがセストを連れてくると、苦しみ抜いたセストは「これがあのテイトの顔だろうか」と歌い出し、苦悩に溢れるテイトは「これがあのセストの姿だろうか」と呟やいて、プブリオは早く署名させようと、それぞれが万感を込めて歌う第18曲の三重唱となっていた。



            セストは恐ろしくて2人だけになってもテイトに打ち明ける勇気がなく、死を覚悟して第19番の有名な別れの歌をアダージョで歌い出し、ホルンの悲しげな伴奏で「絶望して死にます」とアレグロで歌って沈黙を守っていた。素晴らしいセストの懺悔の訴えのアリアであった。友情と法の裁きの板挟みになった皇帝は、理由を告げぬセストに対し心を鬼にして「アレーナへ」と厳罰を科して第20曲の「皇帝は」厳格であるべきだ」と厳しいアリアを歌っていた。闘技場へとの兄の判決を知ったセルヴィリアがアンニオとともに絶望的な第21曲のアリアを歌いながら、絶望的な気持ちでヴィッテリアに助けを求めていた。



           張本人のヴィッテリアは、セストが自分のために口を閉ざして死を迎えようとしている誠実さを知り、深く良心の呵責を覚えていた。そして、自分だけが后妃になろうとしていた心を深く反省し、「今こそ誠意を示すとき」と全てを諦めてテイトに告白しようと決断をした。この「王妃の座、さようなら」と歌うレチタテイーボは大変な迫力に富んでいた。そして静かな伴奏に乗って第23番の有名なロンドを歌い出す。始めに「全ては幻に終わった」とラルゲットでゆっくり歌い出し、バセットホルンが響き始めるとアレグロになって激しく絶望的な気持ちを歌うヴィッテリアの最高の歌が歌われ体格の良いネブレットが凄い歌唱力を発揮していた。




          場面が変わってアレーナに民衆が集まっており、荘厳なオーケストラの前奏が響き初め、湧き上がる大合唱の中でテイトが着席し、その前にセストが引き出されていた。アンニオとセルヴィリアが心配する中で、テイトが大声で罪状を語りかけた時に、ヴィッテリアがテイトに対し大声で語り出し、「私がセストを唆した張本人です」と告白した。テイトは驚きそして困惑したあげくに、理由を質すが、それは「陛下の善良さ」に復讐したのだと告げられテイトは愕然とする。そして改めて反省した上で、他人の裏切りにあっても自分の仁慈は常に不変であることを語って、全員の前で皆を許すことに決断した。これはまさにテイトのこのオペラ最大の伴奏付きレチタテイーボによる迫真劇であった。



            フィナーレになって、セストもヴィッテリアも、思わぬ結果にテイトに深く感謝し「死ぬまで忠誠を誓いますと」とテイトを讃え、セルヴィリアとヴィッテリアの二人の深い感謝の二重唱が清らかに響き、「神々よ、ローマと陛下の聖なる日々を」という民衆の大合唱の中で、テイトは祝福されて、画面の中では大きくクローズアップされて、終幕となっていた。



            ローマの物語を印象づける遺跡の中での、ローマの貴族たちに扮した登場人物6人が、互いのぎらぎらする人間関係をお互いにぶつけ合った迫力ある歌と演技が最後まで続き、素晴らしい迫真の舞台が続けられたと思う。これまでいろいろなテイトの舞台を見てきたが、これは舞台を離れた唯一の映画による映像であり、その意味では最もユニークな映像であった。この映像は私にとってはこのオペラの最初の映像だったので、最初の舞台として新鮮に頭に刷り込まれていたのであるが、今回改めて見直して見ても、やはりレヴァインの音楽には説得力があり、ポネルが考えたようにローマの遺跡を背景にすることによって、非常にイメージしやすい分かりやすい映像になっていると改めて感じさせられた。

今回の出演者では、テイトのタデイはさすが主題役として歌唱力もあり、演技もよくやっていたと思われた。セストのトロヤノスは直ぐ亡くなってしまったので、ワグナー歌手のメゾとしか覚えていないが、非常に優れたセストであろうと思う。ヴィッテリアのネブレットは、見事に悪役ぶりを演じており、歌唱力もあって感心させられた。マルフィターノのセルヴィリアは単なるお嬢さん役ばかりでなく、行動力のあるきつい役を演じていたのでピッタリであると思われた。アンニオのハウエルズもプブリオ役のクルト・リドルもまずまずの存在であったので、6人は良く揃っていたと思われる。

           ヴィッテリアの浅はかな嫉妬に始まって、人の良いテイト帝がみんなを簡単に許してしまう単純な劇の筈であったが、映像第一作のこの作品が、わずか20日前後で作曲した作品かと思わせる大作になっており、その驚きは改めて見直しても変わらない。レヴァイン・ポネルの手に掛かるとこんなにまで深刻な人間くさい劇になるのかと改めて思い知らされた。

ポネルの映像は彼が亡くなった1988年以前の古いものばかりであるが、まだアップしていない映像は「ミトリダーテ」K.87だけになったようなので、演出家としては初めて、彼の作品リストをこの際アップしておきたいと思う。
           今回の映像で、アレーナを初めとして、テイト帝の凱旋門や、カラカラ浴場、チボリのヴィラ・アドリアーナやフォロ・ロマーノを歩くことが、私のローマ訪問の目的になってしまったが、2004年に初めて訪れた写真集や旅行記が今でも新鮮に思われるので、ご覧いただきたいと思う。

(以上)(2012/11/23)


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