(最新DVD紹介;スイス・イタリア放送交響楽団の協奏曲シリーズK.467&K.382)
12-11-2、クリストフ・エッシャー指揮、スイス・イタリア放送交響楽団とミカエル・ルディのピアノによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467および演奏会用ロンドニ長調K.382、1986年スイス、ルガーノ、SSR/RSLにて収録、

−若い指揮者エッシャーとピアニストのルデイの協演は初めてであるが、二人の演奏スタイルが良く似ており、落ち着いた程よいテンポで、オーケストラもピアノもお好みの響きに聞こえ、とても気に入った。この2曲には、玉を転がすような美しいパッセージが随所にあり、ピアノが一音一音、粒立ち良くクリアであり、とても丁寧な演奏をしてくれたので、この二曲の映像は、私のお気に入りの一つになりそうである−

(最新DVD紹介;スイス・イタリア放送交響楽団の協奏曲シリーズK.467&K.382)
12-11-2、クリストフ・エッシャー指揮、スイス・イタリア放送交響楽団とミカエル・ルディのピアノによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467および演奏会用ロンドニ長調K.382、1986年スイス、ルガーノ、SSR/RSLにて収録、
(2011/12/12新宿タワーレコード、Great Concertos、10DVDSet、RTSI/SWISS-TV、)

    11月号の第二曲目の協奏曲については、スイス・イタリア語放送交響楽団の10DVDセットの中に含まれていたもので、クリストフ・エッシャー指揮によるコンサートから、ミカエル・ルディのピアノによるピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467および演奏会用ロンドニ長調K.382をお送りする。このコンサートは、1986年スイス、ルガーノで収録されたもので、最初には「皇帝テイトの慈悲」序曲と、最後にはシューベルトの交響曲第3番ニ長調D.200が演奏されていた。
ピアニストのミハイル・ルディは1953年旧ソヴィエト生まれの若い人であり、1975年にロン=テイボー国際コンクールに優勝した経歴を持ち、1977年にパリに移住して以来、フランスを中心にして活躍している方のようである。今回のコンサートのメインは、勿論、ピアノ協奏曲第21番であるが、続いて弾かれたコンチェルト・ロンドK.382はなかなか演奏機会に恵まれない曲であり、このHPでは2曲目でモダンピアノでは初めてであるので、速くアップしたいと考えてきた。この人のピアノの音はくっきりと目立つタイプなので、両曲とも相性が良いと思われた。

二人が入場し、拍手を浴びながら着席して、ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467の第一楽章が始まった。弦五部のユニゾンで始まる行進曲風の第一主題が明るくリズミックに始まって、弦五部と金管やテインパニとの応答が続いてから、トウッテイによる経過部がリズミックに進行していた。指揮者のエッシャーは、トランペットとテインパニーが刻むリズムに注意を払いながら進めており、途中からオーボエやフルートが明るい響きを見せる副主題が登場して、終始明るい響きの中でトウッテイの行進曲が堂々と進行し、第一主題のみでオーケストラによる提示部を簡潔に終了していた。
      それからファゴットとフルートに導かれるようにミハイル・ルデイの独奏ピアノのアインガングが明るく始まり、トリルを繰り返しているうちに、オーケストラによる第一主題が始まって、独奏ピアノがこれを力強く引き継いで、華やかなパッセージで威勢よく進行していた。ルデイのピアノのパッセージは、繊細で明るく音が際立つように軽快に弾かれていた。やがて独奏ピアノがト短調交響曲の冒頭を思わせるような副主題を繰りかえして明るく印象づけてから、軽快な第二主題が独奏ピアノで歌うように現れた。そしてピアノがオーケストラと競い合うように素晴らしいパッセージを見せながら急速に進行し、次第に高揚しながらオーケストラとともに提示部を締めくくる盛大なエピローグとなって、展開部へと突入して行った。


        展開部では独奏ピアノのルデイのまさに一人舞台の様子で、新しい主題で絢爛たるピアノの技巧が示されていたが、独奏ピアノはオーケストラとも対等に競い合い、大胆で力強いピアノが響いていた。再現部では提示部とは主題の順序が異なっており、オーケストラで第一主題が呈示された後、独奏ピアノがこれを引き継いでから、直ぐに第二主題がピアノで再現されたり変則的であった。後半には第一主題のトッテイによる提示の後オーボエやフルートが明るい響きを見せる印象深い副主題が現れたりしていた。最後のカデンツアでは、第一主題の中からお気に入りのパッセージを思い出すように流暢に弾き流していた。



       第二楽章は弦楽合奏で始まる美しい静かな素晴らしいアンダンテ楽章。初めに第一ヴァイオリンが、コントラバスのピッチカートと第二ヴァイオリンとヴィオラの三連符による豊かな伴奏に乗って、美しいテーマを歌い出し、その甘い調べにはつい引き込まれてしまう独自の美しさがある。やがて木管も加わって、指揮者のエッシャーは静かな美しいオーケストラの世界をゆっくりと築き上げていた。やがて独奏ピアノが自ら左手で三連符を弾きながら登場し、ゆっくりしたピッチカートの豊かな伴奏に乗って右手でこの主題を明快に弾きだした。ルデイのピアノは一音一音、克明に弾かれ、ひとしきり美しく歌ってから華やかなトリルにより終結していた。このピアノの粒立ちの良さは実に快く響き、このピアニストのテンポの良さと丁寧な弾き振りにしばしうっとりしていた。中間部に入って新しい主題がピアノによって示されるが、この中間部のピアノがなんと美しく響くことか。ルデイはここでも一音一音ゆっくりと確かめるように丁寧に弾いており、ここでピアノとオーケストラで交わす対話は何とも夢見るような美しさがあった。再び冒頭の静かな主題に戻るが、ここでは始めから独奏ピアノとオーケストラで始められ幾分変奏されて進行するが、独奏ピアノの方も装飾を交えて弾かれており、ごく短いコーダの後にひっそりと静かに終息していた。カデンツアはなく、一貫してピッチカートの三連符が楽章を通じて響いており、落ち着いた爽やかな感じのする美しい楽章であった。



        第三楽章は、アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイの華やかな主題で始まる展開部を欠いたソナタ形式。オーケストラでロンド主題に似たな明るく軽やかな第一主題がトウッテイで始まり繰り返されてから、弦と木管の交換があって、フェルマータの後に独奏ピアノが短いアインガングで登場し、改めてこのロンド風な主題を軽快に弾きだした。再びオーケストラに主題を渡してから、独奏ピアノによる流れるような16分音符の副主題が走り出し、ルデイは勢いよく軽快にパッセージを弾き進めていた。オーボエに続いてフルートも加わった木管合奏で示された第二主題が提示されると直ぐにピアノに引き継がれ、再び16分音符のピアノの走句が続いて、快調なピアノのペースとなり、オーケストラと対話したり従えながら進行していた。再びフェルマータの後に再現部に突入して、独奏ピアノがロンド風な冒頭主題を弾き出すが、今度は順序を変えてソロ、トウッテイの順で第一主題が再現されていた。再び独奏ピアノが走り出し、第一主題・第二主題と独奏ピアノが鍵盤上を走り回るように駆けめぐって頂点に達し一気にカデンツアとなっていた。ルデイのカデンツアは、非常に短くあっさりとした回想風のものがテンポ良く弾かれ、最後は輝くようなピアノの音階の上昇で華やかにこのフィナーレを終結していた。







   エッシャーの指揮はモーツァルトの曲調をしっかりと捉えており、比較的ゆっくりしたテンポも良く安心して聞くことが出来、一方のルデイのピアノも非常にクリアーで透明感がある音を良く響かせ、第一楽章では実に堂々として軽快に、第二楽章では優美に美しく、フィナーレでは早いパッセージを見事に弾きまくり、力強いタッチを見せて曲を盛り上げていた。

      このコンサートの次の曲は、コンサート・ロンドニ長調K.382であるが、前曲に引き続き、2トランペットとテインパニーが加わった大編成であった。ロンド風な愛らしい主題が‖:8小節:‖:8小節:‖の二部形式で提示された後、7つの変奏が行われる変奏曲形式の曲である。この曲は、1782年3月にウイーンで作曲され、主題が調子が良く直ぐに馴染まれることから、フィナーレの代用楽章としてばかりでなく、アンコールの曲などとして単独でも演奏された人気曲であった。





      曲の主題提示は、エッシャーが落ち着いた速くないテンポで、オーケストラによりロンド風に開始されていたが、前半も後半も繰り返しは丁寧に行われていた。続いて第一変奏は、ルデイの独奏ピアノの単独演奏であって、全体的にスタッカートが良く響く軽やかな変奏であり、丁寧に弾くルデイのピアノが印象的であった。第二変奏は、オーケストラがロンド主題を提示した後、独奏ピアノが前半も後半も三連符を用いて変奏し、主題はフルート・オーボエ・ホルンで演奏されていた。第三変奏は弦楽器が伴奏をし、前半も後半も独奏ピアノが早い分散和音を弾いていたが、お終いにロンド主題の後半をオーケストラが演奏して、この曲のロンドとしての性格を明確にしているようだった。
       続く第四変奏はニ短調に変わりピアノ独奏で装飾的に変奏されて、原主題とかなり変わった展開がなされていたが、異色的な変化が面白かった。第五変奏は独奏ピアノの細かなトリルが右手と左手に現れるもので、フルートとオーボエが主題を奏したり伴奏をしたり変化をつけていた。第六変奏は一転してアダージョとなり、独奏ピアノが装飾音を目立たせながら巧みにゆっくりと変奏をするもので、後半はさらに腕の見せ所のように細かな装飾が施されていた。
       最後の第七変奏は、拍子も速度もアレグロに変わり前半はオーケストラが軽快なテンポで変奏し、後半は主題を木管が、独奏ピアノが分散和音を弾いて展開されていき、最後にはフルオーケストラのコーダとなってカデンツアとなっていた。カデンツアは新全集に掲載されている自作のものを弾いており、ピアノによる技巧がひとしきり示されて速いテンポで曲は終息していた。








       エッシャーの指揮とルデイのピアノとはとても息が合っており、特にルデイのピアノの音がキラキラと輝いており、この曲の良さを浮き彫りにしていた。演奏終了後には、拍手ばかりでなく歓声も上がって、エッシャーとルデイは何回も舞台に現れて、観衆に応えていた。この曲には レヴィンとホグウッドのモーツアルテウムの名演がアップされている(7-5-3)が、この曲はフォルテピアノの響きよりも現代ピアノの方が合っているように聞こえていた。

このコンサートは、当初は名も知らぬ若い指揮者とピアニストの協演であり、余り期待をしないで取り上げたものであるが、二人の演奏スタイルが余り速くない落ち着いたテンポで、オーケストラもピアノも緩急・強弱の表現が好みの中庸さ丁寧さが保たれており、とても気に入った。この2曲には、玉を転がすような美しいパッセージが随所にあり、クリストフ・ルデイは一音一音、クリアに弾いてとても丁寧な演奏をしてくれたので、この演奏は私のお気に入りの一つになりそうである。
また、この演奏では冒頭に「テイト帝の慈悲」序曲で始まり、続いて、以上のピアノ協奏曲が二つ続いていたが、休憩後はシューベルトの交響曲第三番ニ長調D.200が演奏されていた。指揮者エッシャーは、音友社の「世界の指揮者名鑑866」(2010)には残念ながら掲載されていなかったが、古典が得意な若い指揮者として期待が出来そうな指揮者に見え、今後、この二人には注目して行きたいと思う。

(以上)(2012/11/14)


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