(懐かしいLDを見る;フレッシュ&ビューテイフルなモーツアルト・コンサート)
11-9-4、イエルジー・マクシミウク指揮、ポーランド室内管弦楽団、アラン・マリオンによるフルート協奏曲第二番ニ長調K.314、およびジェレミー・メニューインによるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」、1982年制作、ザルツブルグ、

−このマリオンのフルート協奏曲は明るく伸び伸びした演奏であり、テンポ感も良く実に軽快なであり、技術的にも優れたものを持っていた。一方のJ.メニューヒンの「ジュノム」協奏曲は、一音一音、丁寧に弾かれており好感が持てたが、余りピアノが出しゃばらない温和しい演奏であり、もっと個性的であっても良いと思われた−

(懐かしいLDを見る;フレッシュ&ビューテイフルなモーツアルト・コンサート)
11-9-4、イエルジー・マクシミウク指揮、ポーランド室内管弦楽団、アラン・マリオンによるフルート協奏曲第二番ニ長調K.314、およびジェレミー・メニューインによるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」、1982年制作、ザルツブルグ、
(クラウンレコード株式会社、78LC-1003)

     このレーザーデイスクは、片面で約1時間の演奏を収録したLDの初期の頃の映像である。カバーの表紙の写真はザルツブルグを流れるザルツアッハ川からホーエンザルツブルグ城を遠望した美しい風景写真であったが、肝心の映像の場所や時期に関する記述が何処にもなく、この映像だけでは特定することが困難であった。



 このコンサートは、1936年ポーランド生まれの指揮者イエルジー・マクシミウクによるポーランド室内管弦楽団による演奏であり、映像では何処かのお城の庭園内のライブコンサートとして収録されているが、観客の姿がなく拍手がないところから、ライブコンサートではなく、この場所をスタジオ替わりに使用したのかも知れない。このモーツアルト・コンサートでは、最初にフルート協奏曲第2番ニ長調K.314(285d)が演奏され、続いて同じ場所でピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」が演奏されていたが、スタジオ映像にしてはカメラワークが良くなく、独奏者や指揮者のクローズアップが殆どない平凡な映像であった。
 最初のフルート協奏曲第2番ニ長調K.314(285d)は、アラン・マリオンというフランスのマルセイユに1938年に生まれたフルーテイストによる演奏であり、フランスの正統的スタイルの演奏で、伸びやかな明るいフルートの音色が印象的であった。この曲のオリジナルは、オーボエ協奏曲ハ長調K.314であり、モーツアルトが間に合わせのためこれを編曲したものだという。新全集にはフルート版が第二番として従来通り掲載していたので、スコアを見ながら聴いてみた。同一K番号で2曲あることになるので、このHPでは、検索上、この曲をオーボエ協奏曲K.314と区別して、K.314-2として扱っている。



第一楽章は協奏風のソナタ形式で書かれており、アレグロ・アペルトと指示されているように、明るくはつらつとした楽章であり、フルオーケストラでお馴染みの第一主題が軽快に提示されていた。続いて装飾音符のついた第二主題も弦楽器で歌うように調子よく軽やかに提示されてから、明快な分かりやすい終止主題が繰り返されて、簡潔に第一提示部を終えていた。そしてマリオンの独奏フルートが登場し、フルートが高い二音を4小節に渡って引き伸ばしていると同時に、オーケストラが第一主題を提示してから、直ちに独奏フルートが主題を引き継いで、息をせききったように速いパッセージを繰り返し、独奏フルートが導入主題を技巧的に何度も反復していた。早いパッセージで歌い出したり変奏したり、独奏フルートは忙しいが、マリオンはこの賑やかなパッセージを淀みなくこなしていた。続いてゆっくりした第二主題が独奏フルートにより提示されるが、ここでもマリオンはこの装飾のある主題を歌うように明るく提示しており、ひとしきり技巧的な素晴らしいパッセージを示してから、特徴のある独特な終止主題を経て展開部に突入していた。展開部では独奏フルートが導入主題を何回も繰り返すように始まり、やがて早いパッセージを繰り返す短いものであった。再現部は独奏フルート主体で、第二提示部とほぼ同じように変奏された第一主題が暫く続いてから第二主題に移行して、型通りに進行していた。カデンツアは冒頭の導入主題をもじった高度な技巧を要するもので、少し長かったがソリストの自由な創作によるものであった。



    第二楽章はアダージョ・マ・ノン・トロッポの弦楽器のユニゾンの荘重な導入主題で開始されるが、直ぐに独奏フルートが明るく輝くような第一主題を提示しながら歌い継いでいく。続いて第一ヴァイオリンと独奏フルートとがかけ合うような第二主題が始まるが、いつの間にか独奏フルートが主体になって美しいパッセージを繰り広げる穏やかなアダージョであった。マリオンの独奏フルートは、輝くように装飾をしたり変奏をしたりゆっくりと進めながら、巧みに技巧の冴えを明確に示していた。短い10小節ほどの中間部を経て再現部に入り、冒頭のアダージョの主題で始まるが、いきなり変奏された第二主題が主体になって進み、珍しく再現部では第一主題は省略されていた。ここでも短いカデンツアを用意されており、最後には冒頭の叙情的な主題で静かに結ばれていた。


    フィナーレはロンドと書き込まれたアレグロ楽章であるが、主題の提示の仕方から言えば、モーツアルトに良くある変則的なソナタ形式。曲はいきなり独奏フルートにより軽快なロンド主題で明るく始まり、トウッテイで力強く反復されていた。この主題は曲の進行とともに何回か繰り返されるが、モーツアルトはこの主題をオペラ「後宮」の12番のブロンテのアリア「何て言う喜び」に巧みに転用しており、明るいモーツアルトの代名詞とも言える曲。続いてオーボエとホルンに導かれて独奏フルートが新しい主題を提示し、やがてヴァイオリンが第二主題を提示して、そのままコーダになり主題提示部が終わっていた。続いて中間部に入り独奏フルートが第一主題の変形とも言えるパッセージを続けてから、再びオーボエとホルンに導かれて独奏フルートが新しい主題を提示し、独奏フルートがそのまま華やかなパッセージを続け、フェルマータで一呼吸し再現部に突入していた。ここでは独奏フルートが冒頭主題を明るく提示し、トウッテイで繰り返してから直ちに独奏フルートが第二主題を提示し、そのまま明るく目まぐるしく変化したパッセージを重ねてフェルマータに入りカデンツアになっていた。マリオンは自信に満ちた表情でこの長いパッセージを無難にこなしていた。短いカデンツアのあとに第一主題がもう一度明るく現れてコーダで結ばれていた。


    このマリオンの演奏は、明るく伸び伸びした演奏であり、テンポ感も良く実に軽快なフルート協奏曲であり、技術的にも優れたものを持っていた。音友社の管楽器ソリスト2004にも掲載されているランパルなどの後継者として活躍している方であった。
    最近はオーボエ協奏曲として演奏される方が多くなったこの曲を、久し振りで、しかもスコアを見ながらじっくり聴いたが、私にはオーボエ協奏曲として聴くよりも、昔ながらの懐かしいフルート協奏曲の第2番として聴く方が楽しく聞こえていた。私には第一番ト長調よりもむしろこの曲の方がフルート協奏曲らしいような気がしていた。

 一方のピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」は、このLDにより日本の初デビューとされるジェレミー・メニューヒンによるピアノ演奏である。彼はかの有名なユーデイ・メニューヒンの息子であり、1951年サンフランシスコ生まれのピアニストである。このジュノム協奏曲は、余りピアノが出しゃばらない温和しい演奏であり、もっと個性的であっても良いと思われた。残念ながら、音友社のPianist2008には掲載されておらず、彼の最近の活動状態は知られていない。




  「ジュノム」協奏曲はザルツブルグ時代の協奏曲の中では、抜きんでて内容的にも形式的にも優れた曲とされている。この曲の第一楽章では第一主題がモチーブで分割されており、初めにトウッテイで最初のモチーブで示されると、続けて独奏ピアノが次のモチーブで登場し、これらが対話風に繰り返されてから、オーケストラが軽快に明るく第一主題を提示していた。ピアノ協奏曲において、このように独奏ピアノが最初から意欲的に登場するのは、この曲が初めてのことであり、このような例が登場するのはベートーヴェンの第四・第五ピアノ協奏曲まで待たねばならないと言われる。 続いてすこし暗い感じの第二主題がオーケストラで示されるが、この主題も前半と後半の二つのモチーブに分かれており、流れるようにオーケストラが進行して第一の提示部を終えていた。そこで独奏ピアノが長いトリルを響かせながら登場し、オーケストラと独奏ピアノとが冒頭のように対話風に進行してから、直ちに独奏ピアノが第一主題を力強く弾きだし、華やかに16分音符のパッセージを弾き出した。メニューヒンのピアノは軽いタッチで粒が揃っており温和しく弾かれ、続く第二主題も独奏ピアノが軽快に弾むように弾かれメニューヒンのペースとなって進んでいた。
  展開部では、最初と同じ始まりでオーケストラとピアノが登場してから、冒頭の二つのモチーブが独奏ピアノで執拗に形を変えて装飾されて展開され、元気よく繰り返されて再現部に移行していた。再現部では、冒頭のソロとトウッテイが、互いに入れ替わりながら対話を行い、素晴らしいピアノとオーケストラの掛け合いが第一・第二主題へと続いていた。カデンツアは新全集には二つ用意されており、ここではBの長い方を使っていたが、Bの方が演奏効果が優れているのか、弾く人が多いように思われた。




    第二楽章は、ハ短調のヴァイオリンの合奏で始まるアンダンテイーノのもの憂い感じの長い序奏で開始されるのが珍しい。続いて第一主題がピアノソロでゆっくりと始まり、絶えず装飾をつけながら綿々と続いてから、ヴァイオリンに始まり独奏ピアノが応える第二主題が登場し、そのまま独奏ピアノが綿々とオーケスオラと対話しながら進行する美しい曲となっていた。メニューヒンは、ゆっくりとしたソロピアノでここでも粒だちの良いピアノを一音一音丁寧に弾いていた。続いて短い独奏ピアノが華やかな展開部が終わると、序奏なしで再現部が始まり、第一主題、続いて第二主題の順に再現されていた。新全集では二つのカデンツアが示されているが、メニューヒンはBの長い方のカデンツアを弾いていた。






    フィナーレはロンドと書かれたプレストの楽章であり、形式はA-B-A-C-A-B-A のロンド形式を取っているが、Cの部分が後述するように独立したメヌエットになっており、一つの楽章で二つの楽章を包含するような大ロンド形式となっていた。Aの部分は独奏ピアノによる軽快なロンド主題でプレストで始まるが、ソロピアノが34小節も続き、それ以降はオーケストラを従えて、早いパッセージが続いていた。メニューヒンは余り急がずにテンポ良く弾き進み、後半のパッセージもなめらかに粒ぞろいに弾かれていた。続いて右手と左手が交錯する次の主題がピアノソロで早いテンポで始まりオーケストラとも協奏されていくが、ここでロンド形式のA-Bの最後に、短い第一のアインガングが入り一呼吸する。そして、独奏ピアノによるロンド主題Aが始めと同じスタイルで始まった。オーケストラとピアノで早いテンポでロンド主題が展開されて終息するとCの部分が始まり、これが何とカンタービレの美しいメヌエット。美しい主題が独奏ピアノで流れ出し、やがてピッチカートのオーケストラを従えてゆっくりとピアノが進行しするが、このメヌエットではピアノが変奏曲のように弾かれて、しばしの安らぎのように表情豊かに響いていた。ここでも一区切りを示すような短い第二のアインガンクが弾かれてから、再び最初のロンド主題に戻っていた。最後のA'-B'-A"では、ピアノが良く動き回ってフイナーレを盛り上げてからさり気なく終息していた。



     このJ.メニューヒンの映像は、非常に若々しく、恐らく彼のモーツアルト作品のデビュー演奏であろうと思われる。一音一音、丁寧に弾くピアニストで好感が持てたが、余りピアノが出しゃばらない温和しい演奏であり、もっと個性的であっても良いと思われた。パソコンで検索すると、彼は1984年にニュー・ヨークのピアノコンクール勝者としてデビューし、いろいろなオーケストラと共演を重ねてきたようであり、主なオーケストラを挙げると、ロイヤル・フィルハーモニー、ベルリン交響楽団、Orchestre Nationaleデ・フランス、ヒューストン・シンフォニー、イスラエル交響楽団、チェコの交響楽団、ザルツブルグMozarteumとチューリッヒ、サンクトペテルスブルグとプラハならびにイギリス室内楽団など、多くの主要なオーケストラと共演してきたとされる。

 彼は、Chandos、EMIに、シューベルト、モーツァルト、ドビュッシー、ベートーベン、ドボルザークなどの作品をレコーでイングしている。また、彼の父(ユーディ・メニューヒン)と共演したバイオリンのためのバルトークのソナタのCDは、評判が高いDisqueに与えられるグランプリ賞を獲得している。

      このLDは、2010年12月にフェラインの会員からLDプレイヤーが故障したので処分したいとして頂いた3枚のLDの1枚である。他の2枚のボニーのK.339 とグルダのK.466およびK.537は有名な2枚なのでアップ済みであるが、このLDの存在は知らなかった。しかし、右の写真のような美しい写真を見ると、曲がとても良いので思わず手を出したくなるようなビューテイフルなモーツアルト・コンサートを予想させてしまう。この絵が素晴らしいので、記念に添付しておきたい。

(以上)(2011/09/07)


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