(懐かしいS-VHSテープ;ゲンネンヴァイン、ルードヴィヒスブルグ城の92年「魔笛」K.620)
11-8-2、ヴォルフガング・ゲンネンヴァイン指揮音楽祭O&CHOの「魔笛」K.620、アクセル・アンテイ演出、1992年制作、ルードヴィヒスブルグ城音楽祭、バーデンバーデン、

−全体としては地方劇場の小作りな「魔笛」として、それなりに纏まりの良い映像であると感じていたが、改めて見直すと舞台が簡素にまとまりすぎて、歌手陣もそつなく歌っているものの圧倒されるような迫力が感じられず、最後の大団円でも盛り上がりが不足しており、残念ながら、もう一息という感じであった−

(懐かしいS-VHSテープ;ゲンネンヴァイン、ルードヴィヒスブルグ城の92年「魔笛」K.620)
11-8-2、ヴォルフガング・ゲンネンヴァイン指揮音楽祭O&CHOの「魔笛」K.620、アクセル・アンテイ演出、1992年制作、ルードヴィヒスブルグ城音楽祭、バーデンバーデン、
(配役)パミーナ;ウルリケ・ゾーンタク、タミーノ;デオン・ファン・デア・ヴァルト、ザラストロ;コルネリウス・ハウプトマン、夜の女王;アントレア・フレイ、パパゲーノ;トーマス・モア、パパゲーナ;パトリシア・ロザリオ、モノスタトス;ケヴィン・コナーズ、ほか、
(2001年01月20日、クラシカジャパンの放送をS-VHSテープ3倍速にて収録) 

    8月号の第二曲は、1992年のルードヴィッヒスブルグ城音楽祭の「魔笛」K.620であり、ゲンネンヴァイン指揮、アクセル・アンテイ演出の衣装が現代的な新しい舞台となっている。シュトットガルトの近郊にあるこのお城の歌劇場の音楽祭は、1763年7月に7歳のモーツアルトがウルムから到着し、カール・オイゲン公を訪問したことから、1954年に改修された宮廷歌劇場で開催されているようであり、このオペラ以外にも「後宮」が同じ指揮者で収録されている。このオペラの配役を見て、タミーノのデア・ヴァルトとパミーナのウルリケ・ゾーンタクが見物であろうと想像していたが、アンテイの新しい演出が好みで評価が分かれそうであり、良く細部にまで目を通して見なければならないと考えていた。




この映像は古いS-VHSテープに収録されており、写真写りは良くない。ゲンネンヴァインがオーケストラピットに入場し客席で挨拶をしてから、直ちに三つの大和音で序曲がゆっくりしたテンポで始まった。この序奏部は遅いテンポで進んでいたが、やがて弦の合奏のアレグロの主部に入って早いテンポで進み出し、映像はオペラ劇場内を写していたが、さすが古い宮殿内だけあって柱・壁・天井には古い飾りが多く、序曲の最中に盛んにカメラの対照になっていた。中間部での三和音のあとに画面では出演者の紹介が始まっていたが、これ以降はゲンネンヴァインの指揮ぶりが序曲の間中、写し出されていた。




白い舞台がオーケストラピットに斜めに張り出したように見えていたが、幕が開くと、「助けてくれ」と叫んで白い日本の羽織姿のタミーノの逃げる姿と絵に描かれた大口の大蛇の姿が見え、タミーノの矢が尽きて倒れてしまった。そこへ長い槍を手にした三人の従女のかけ声と光線で大蛇が倒されていた。三人の従女が勝利を宣言し、タミーノを覗き込み、何て素敵な若者と美しい三重唱で歌い出し、誰が残るか三人で女らしく争いながら、結局は三人で女王に知らせに行った。



    タミーノが気がつくと大蛇が死んでおり、遠くから軽快な序奏とともに笛の音が聞こえ、鳥刺しパパゲーノが陽気に歌いながら登場してきた。その姿は赤くて長いクチバシと白いしっぽの毛と半ズボンの現代風の衣裳のパパゲーノで、口笛もパンも自分で吹いていた。タミーノが話しかけると、パパゲーノは死んだ大蛇を倒したのはこの俺だと自慢してしまい、駆けつけた三人の従女に咎められ、タミーノにはパミーナの絵姿が渡された。タミーノは、その絵姿を見て「何て美しい姿」と明るく歌い出した。これもゆっくりしたテンポでじっくりと歌われていたが、三人の従女からパミーナが浚われたことを知り、タミーノは何としても助け出そうと決心をした。



    そこへ暗闇の中から夜の女王が三人の従女を従えて姿を現し、「怖がらないで、愛しい息子よ」とレチタテイーボから朗々と歌い出し、後半には「おまえこそ娘の救い手だ」と速いテンポのコロラチューラの技巧のさえを見せていた。暗い演出が女王をより神秘的な存在にしていた。口がきけないパパゲーノが「ム、ム、ム、」と悲鳴を上げて五重唱が始まり、三人の従女に助けられていたが、ここで彼女たちは、王子には「魔法の笛」を、パパゲーノには「銀の鈴」が女王様の贈り物として手渡されて、空中からの三人の童子たちの道案内で二人はザラストロの国へと元気よく出発した。


    場面が変わって、パミーナがモノスタトスに捕まって城内は大騒ぎ。パミーナが倒れていると、そこへパパゲーノが恐る恐る顔を出し、パミーナを見つけて近寄ると、突然、モノスタトスに鉢合わせ。お互いに「悪魔だ!」と驚いて逃げ去るが、パパゲーノはパミーナに近づいて事情を話し、直ぐに仲良くなった。そして二人は男と女の愛の賛歌とも言える美しい二重唱を歌い出した。パミーナの美しい声と豊かな表情のパパゲーノの声が良く響き、魔笛の世界を思わせていた。




    フィナーレに入って、タミーノが三人の童子たちに案内されて舞台に現れ、そこで三人に「不屈・忍耐・沈黙」と男らしくと教わった。ザラストロの宮殿の前庭に到着したタミーノは、パミーナを助けようと決意を固め、宮殿に入ろうとして「下がれ!」と脅されたがひるまずに、出てきた弁者と押し問答。ザラストロは聖人で、お前は女に騙されていると言われ、途方に暮れていた。思わず「パミーナは?」と口に出すと、見えない声が聞こえてきて、「パミーナは生きている」という返事。




    タミーノは感動して、見えない声に感謝して魔法の笛を吹くと、動物たちが沢山出てきた。喜んでもっと吹いているうちに、パパゲーノの笛が応えてきた。勇気100倍になり、パパゲーノたちを見つけようとしていたが、場面が変わって、そこに現れたパパゲーノとパミーナがモノスタトス一行に捕まってしまった。そこでパパゲーノが手にした銀の鈴を鳴らしてみると、ラ、ラ、ラ、の美しい音楽が鳴り出して、一行はどこかへ行ってしまっていた。




    場面が変わり、白い舞台の一角がピラミッドに変わり、坊主頭の白装束の僧侶たちがザラストロを迎えて、「ザラストロ万歳」の大合唱が始まり、ザラストロが登場してきた。パミーナは急にしっかりした王女の口調で、正直に真実を語るとザラストロは良く分かっていたが、母の名を耳にすると、自由を与えることは出来ないと釘を刺していた。そこへモノスタトスがタミーノを連れて登場し、タミーノとパミーナが初めて顔を合わせていた。しかし、モノスタトスは処罰され、タミーノとパパゲーノは試練を受けることになって宮殿に導かれ、ここで第一幕は終了となっていた。







第二幕は厳かな行進曲の前奏が速いテンポで開始され、幕が開くと舞台では白いピラミッドを背景に、大勢の僧侶たちが入場を始めていた。ザラストロはタミーノが試練を受けたいと望んでいることを皆に告げ、三つの和音が響いてから、「イシスとオシリスの神に、彼らに叡智の心を与えたまえ」とゆっくりと歌い出した。ザラストロの敬虔な落ち着いた調べは堂々としており白い僧服の合唱団たちによる僧侶の祈りの声も間に挟まれて、いかにも「魔笛」らしい荘厳な宗教的な行事のように見えた。




    一方、暗闇の中のタミーノとパパゲーノは、雷鳴により脅されて大騒ぎしていると、二人の僧侶が登場し、試練を受けることを確認したが、パパゲーノはザラストロが用意した自分に似たパパゲーナに会えることを楽しみに試練に加わった。そして「賢い男も女の策略にかかる」と沈黙と女の企みに気をつけろと、踊りながら二重唱で教えていた。早速、暗闇の中から三人の従女が現れて、女王様が来ていると頻りに誘う五重唱が始まっていたが、パパゲーノは何とか頑張り通したので、三人は諦めて消え去った。




    暗闇の中でモノスタトスが登場し、月明かりの中で寝込んでいるパミーナを発見して、「惚れれば楽しいさ」と早口のアリアを歌い出していた。そして、いたずらをしようとして折から現れた夜の女王に見つかって、「お下がり!」と一喝されてしまった。





  気のついたパミーナに女王はナイフを手渡し、「ザラストロに復讐しなければ、お前は私の娘でない」とコロラチューラで歌う華やかなアリアを歌って立ち去っていった。一人呆然とナイフを持って立ちすくんでいたパミーナは、モノスタトスに脅されていたが、ザラストロが突然に現れて、一喝されて逃げ去った。母親の罪を許してやって欲しいと訴えるパミーナに、ザラストロは慰めるように「この聖なる殿堂には、復讐を思う人はいない」と歌い出し、この美しいアリアを朗々と歌っていた。

    再び暗闇の中で僧侶たちがここに残れと立ち去ると、タミーノとパパゲーノは退屈してしまう。パパゲーノがここには「水もない」とこぼしていると、白い装束の婆さんがが現れて水を差し出した。パパゲーノが退屈しのぎにからかうと、18歳と2分の若い婆さんの恋人は、ここにいるパパゲーノであると分かって、さあ大変。しかし、暗闇と雷鳴のお陰でこの場は救われた。そこへ三人の童子が現れて、「ザラストロの国にようこそ」と歌い出し、魔法の笛と銀の鈴を手渡し、ワインや食べ物を手渡して、沈黙を守るように注意していた。タミーノが思わず笛を吹くと、それを聞きつけてパミーナが話しかけてきた。しかし、男二人は注意されたばかりであるので、相手になるわけにいかない。パミーナは悲しげに「ああ、確かにもう終わりなのね」と歌い出し、無視されるのは死ぬほどつらいと恨めしそうに歌っていた。パパゲーノも今回は立派だった。




     三つの和音が鳴り響き、僧侶たちが集まって、僧侶たちの合唱が始まっていた。合唱は、「イシスとオシリスの神よ、何という喜び」と祈っていたが、しかし続けて良く聞いていると、「若者は我らの務めに捧げるであろう」と歌っていた。ザラストロが登場し、「王子よ、冷静であった」と語り、パミーナを呼んで別れの三重唱が始まっていた。別れがつらいと歌う二人に、何事も神々の意思だと歌うザラストロのそれぞれの心を歌う見事な三重唱になっていた。

     一方、パパゲーノはワインにありついてご機嫌であったが、思いついたように銀の鈴を振るとグロッケンシュピールが明るく鳴り出し、「パパゲーノは若い娘が欲しいな」と有名なアリアを歌い出した。ワインを飲みながら、調子に乗って歌ってるうちに、「私だよ、お兄さん」と例の婆さんが現れた。しつこく握手を求められ、パンと水だけの世界になると脅されて手を出すと、あら不思議や、婆さんが白い頭巾をとると若いパパゲーナが現れた。パパゲーナと名を呼んで追いかけようとしたが、僧侶に遮られもう一息で逃げられてしまった。

     フィナーレに入って、三人の童子たちが「朝の訪れを告げる太陽が輝く」と明るく歌い出していたが、彼らは様子がおかしいパミーナを見つけて近づいた。パミーナは母からの短剣を持ち、悲しみの余り自殺しそうな様子でふらふらしていた。三人はタミーノに会わせてあげるとご機嫌を取り、隙を見てナイフを取り上げ、連れだってタミーノを探しに出発した。




    場面が変わって、暗闇の中に岩山がかくれ、二人の僧侶がこの背後の岩山を守っており、「この道を来たるもの、火、水、大気、そして大地で清められる」とコラール旋律で歌っていた。タミーノが駆けつけて、これに勇敢に応えて進もうとしていると、パミーナの声が遠くから聞こえてきた。二人は会話が許され、「私のタミーノ」「私のパミーナ」と互いに劇的な再会をしてから、ピッチカートの伴奏に乗って、二人の愛と魔笛の力で試練の道を克服しようと相談をした。タミーノが笛を吹きパミーナが案内をしながら、二人は初めに「火の試練」をクリアした。そして二人は元気で戻ると、続いて「水の試練」に立ち向かい、元気に戻ると二人は大合唱で勝利を祝福され、神殿へと迎えられていた。



     一方、場面が変わって、一目見た若いパパゲーナを探して、パパゲーノが暗闇の中を駆け回ってきたが、どうしても捕まらない。遂に諦めて首吊りでもしようかと思っていたら木の枝が舞台上に現れた。首吊りのロープを枝に掛けて、1、2、3、とゆっくり数えてから首を吊ろうとしても、誰も声を掛けて助けてくれない。諦めて思い切って首を吊ろうとしたときに、三人の童子が現れて、銀の鈴を鳴らせという。忘れていたとばかりに、パパゲーノが勢い込んで鈴を鳴らすと、大きな卵の陰から可愛いいパパゲーナが姿を見せ、二人は劇的な「パ、パ、パ」の二重唱となっていた。この演出では、小さいパパゲーノとパパゲーナは、三人の童子たちが協力をして観客の笑いを誘っていた。



     暗闇の中でモノスタトスの案内で夜の女王の一行が、ザラストロに復讐しようと神殿の地下に忍び込んで来たが、それを警戒し待ち構えていた一行による雷鳴や稲妻により一撃で地下深く沈められていた。ザラストロは「太陽の光」の勝利宣言を行い、集まった僧侶たち一同による勝利の祝福の大合唱が始まっていた。広場の中央には、三人の童子たちが花道を作り、若き王子のタミーノとパミーナが揃って登場して花道をゆっくりと行進していた。そしてイシスとオシリスの神々に感謝の大合唱を捧げて終幕となっていた。非常に簡素な舞台で、少人数の大団円であり、通常、登場する動物たちや、パパゲーノやパパゲーナや大勢の子供たちの姿が見えず、若い王子と王女の誕生を祝った賑やかな合唱で、三人の童子たちだけが大忙しの大団円となっていた。



    この映像はバーデンバーデンのルードヴィヒスブルグ城音楽祭と名付けられた南ドイツのローカルな宮殿における音楽祭のドイツ語オペラ「魔笛」であると思っていたが、ゲンネンヴァインが指揮する音楽祭のオーケストラも合唱団も水準が高く、地方公演とは思わせぬ立派なオペラ作りをしており、感心させられた。1992年当時の仮設的な舞台とすれば、舞台作りは簡素なものにならざるを得ないが、ザラストロと僧侶たちの重々しいフリーメソン風とは感じさせぬ斬新なスタイルの衣裳やパパゲーノとパパゲーナのお揃いの現代風の衣裳などに見慣れない新しさ感じさせていた。見始めた当初は斬新なスタイルの衣装で新しい何かが始まるかという期待を抱かせていたが、終わってみれば衣裳こそ見慣れぬスタイルであったが、リブレットに忠実なむしろ正統的なスタイルであり、安心して楽しんで見ることが出来た。簡素すぎた舞台で最後の大団円でもあっさりと終了しており、欲を言えば、ドイツでの上演の「魔笛」だけに、もっとザラストロの威厳ある支配と、お客さんを喜ばせるメルヘン風の仕掛けをなどがあっても良かったように思われた。


今回のアンテイ演出は、小さな白い四角い舞台の上で繰り広げられる「魔笛」であり、背景は真っ暗であり、時々使われる背景画、例えば冒頭の大蛇や、女王登場時の月や星の姿、パパゲーノの鳥や首吊りの枝などが、簡素ながら十分説明の役割を果たしていた。また、奥の一角を折り曲げたピラミッドもフリーメーソンの祭壇として利用されていたが素晴らしいアイデアであると思われた。ライトも巧みに使われており、タミーノの絵姿のアリアであるとか二人の鎧をまとった僧侶などに工夫が凝らされていた。舞台の簡素化・抽象化の先触れとして、いろいろなアイデアを見せられた演出であった。

歌手陣では予想通りタミーノのデア・ヴァルトとパミーナのゾーンタクが、歌も演技も存在感を見せており、また、ザラストロのハウプトマンが朗々とした歌唱力で他を圧倒していた。それに加えて夜の女王のアンドレア・フライもまずまずの歌を披露していたが、パパゲーノのト−マス・モアは歌よりも演技の人で、半ズボンのパパゲーノを印象的に演じていた。

      全体としては、地方劇場の小作りな「魔笛」として、それなりに纏まりの良い映像であると感じていたが、舞台が簡素にまとまりすぎて、歌手陣もそつなく歌っているものの圧倒されるような迫力が感じられず、最後の大団円でも盛り上がりが不足しており、残念に思われた。

(以上)(2011/08/18)


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