(懐かしいLDより;グルダ弾き振りのピアノ協奏曲第20番と第26番)
11-6-4、フリードリッヒ・グルダの弾き振りによるミュンヘンフイルとのピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466および第26番ニ長調K.537「戴冠式」、1986年7月12日、ミュンヘン・フイルハーモニー・ライブ、

−両曲とも、12年前のアバド指揮のLP盤が型にはまった伝統的な演奏であったに対し、今回の弾き振り盤ではグルダがオーケストラとピアノの相互の響きを楽しんでいるような自由闊達な演奏ぶりであり、彼が好きな方にはこの上ない喜びや楽しみを与える演奏であると思われる。今回の演奏ではさすがに記録に残ることを意識したのか、グルダにしては、必要以上に崩したり、余分な装飾は少なかったので、私にはニ短調もまずまずであったが、「戴冠式」がとても楽しく聴けた。この曲の冒頭で、グルダは左手で和音を強く弾いて、オーケストラの響きを補強していたが、確かに効果があると思った −−−−U-tubeで、クリック一つでこれら2曲・6楽章の演奏が楽しめます−

(懐かしいLDより;グルダ弾き振りのピアノ協奏曲第20番と第26番)
11-6-4、フリードリッヒ・グルダの弾き振りによるミュンヘンフイルとのピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466および第26番ニ長調K.537「戴冠式」、1986年7月12日、ミュンヘン・フイルハーモニー・ライブ、
(日本フォノグラム、レーザー・デイスク、PHILIPS-78VC108) 

     第四曲目は、懐かしいレーザーデイスクから、フリードリッヒ・グルダの弾き振りによるミュンヘンフイルとのピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466および第26番ニ長調K.537「戴冠式」を予定している。これは最近アップすることが多くなってきたピアノ協奏曲の一環としてアップするものである。この映像はグルダの謂わば絶頂期の映像であり、実にゆとりのあるグルダならではの弾き振りであり、1986年夏のミュンヘン・フイ ルハーモニー・ライブである。体調が良ければ是非アップしたいと考えているので、ご期待いただきたい。
私のデータベースでは、グルダのこの弾き振りの演奏は2組目である。彼の最初のLPは、アバドとウイーンフィイルと組んだ4曲の協奏曲(1974)、20番、21番、26番、27番であり、私は、当時、この最新盤を購入して、音も良く、アバドの指揮で整ったピアノを弾くグルダの真面目な演奏の4曲は、これらのベストに近いものと考えていた。今回の弾き振りは、それから12年後の、グルダがジャズを含めた自由な演奏を謳歌していた頃の演奏であり、20番と26番を比較するように聞くことが出来る。両曲とも、LP盤が型にはまった伝統的な演奏であるに対し、今回の弾き振り盤ではグルダがオーケストラとピアノの相互の響きを楽しんでいるような自由闊達な演奏ぶりであり、恐らく、後者はグルダでなければ出来ない演奏で、彼を好きな方にはこの上ない喜びや楽しみを与える演奏であると思われる。


    コンサートの第一曲目は、ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466である。グルダはベレー帽に黒ずくめのスマートな格好で威勢よく登場し、満場の観衆に照れたように挨拶をし、白のYシャツ姿のオーケストラに向かって、立ったままで両手を広げて指揮を開始した。低弦の三連符とシンコペーションのリズムによる出だしは重々しく始まるが、グルダの指揮は彼独特の勝手流のよう。しかし、オーケストラは心得たように動き出し、暗い表情の弦による第一主題が進み出した。やがてオーボエとフルートによる明るい表情の副主題が表れてホッとするが、そのまま経過部となり、グルダの力強い指揮でオーケストラが高まりを見せながら力強く主題提示を終えていた。
    グルダのピアノが始まりアインガングのピアノの音がクリアに粒立ち、素晴らしい始まりを見せてから、直ぐに不気味なリズムに支えられるような第一主題に入りピアノが細やかなフレーズで走り出す。そして、続けて明るい副主題を木管とピアノで提示してから、おもむろに初めて独奏ピアノが第二主題を晴れやかに美しく提示した。ここでは短いオーケストラとピアノの対話から始まり、オーケストラとピアノによる長い対話が続けられ、さらに木管もこれに加わると独奏ピアノが早い走句で縦横に走り出し、粒立つようなピアノの技巧を示しながら突進していた。そして、途中からグルダは起ち上がり、力強く指揮をしながら主題提示部のオーケストラをしっかりと締めくくっていた。


    展開部では独奏ピアノによるアインガングの主題で始まり、オーケストラとグルダの独奏ピアノが交互に高まり合いながら進行していた。後半では再び第一主題のリズム主題が現れて、独奏ピアノの目まぐるしい技巧的なパッセージが激しく続き、まさにグルダのペースとなって力強く終結していた。再現部では、オーケストラによる第一主題が途中からピアノが引き継ぐように活躍して、いつの間にかオーケストラを従えながら進行し、続く副主題がピアノで提示された後に現れた第二主題では、独奏ピアノの後は木管とピアノが交互に主題を提示したり、木管が主題を提示したりして進みながら、独奏ピアノの走句となり、盛り上がりながらカデンツアへと突入して行った。グルダはお馴染みのベートーヴェンのカデンツアを丁寧に弾いていたが、後半ではこれまで出て来た主題と異なるものが、随時、上手に組み合わされていたように聞こえていた。その後はコーダに入りオーケストラだけの世界。グルダは楽しげに指揮をしてこの楽章は結ばれていた。
U-tubeによるグルダの演奏(第一楽章)




    続く第二楽章はロマンスと題された三部形式の歌謡調の独奏ピアノによる愛らしい夢を奏でるような楽章。初めにグルダの独奏ピアノが実に美しくて優雅なロマンスの主題をゆっくりと弾きだした。そして主題全体を呈示した後、静かに木管と弦楽器に渡して行き、その後は独奏ピアノが主体的に歌うように進行していた。続いて独奏ピアノがトーンを変えて第二の新しい主題を提起するが、これは一音一音ピアノの音をクリアに響かせながら静かな弦の伴奏でゆっくりとこの上もなく美しく進行し、グルダはご機嫌で弾いており、時には変奏や装飾音すら加えながら弾き進んでいた。そして再び最初のロマンスにゆっくりと戻って第一部を終えていた。
    そこへ、突然、激しい独奏ピアノが、まどろみをぶち壊すように、意表をついて疾風怒濤のように激しく共鳴し、鋭い上昇音形がもの凄いスピードで鍵盤上を駆けめぐっていた。この中間部は、木管が後押しをしながら巧みに繰り返され、素晴らしいスピードのまま盛り上がった後に静かに収まりを見せていた。ピアノ協奏曲はオペラのようだとよく言われるが、この穏やかなロマンス主題に対し中間部での意表をついた激しい変化はまさに対照的であり、これこそオペラのようなダイナミックな姿を現していた。しかし、激しい嵐が去ると再び第三部としてあの美しいロマンスに戻ってゆっくりと進行し、まどろむように終息していた。
U-tubeによるグルダの演奏(第二楽章)



    フィナーレはアレグロ・アッサイの早い上昇する第一主題がグルダの独奏ピアノで始まり、これがオーケストラに渡されてトウッテイで激しく反復され拡大されていた。続いて独奏ピアノが踊るような別の新しい主題を弾き始めて経過部に発展していた。そして再び独奏ピアノが力強い軽快な第二主題を提示して行くが、グルダのピアノはスピード感にあふれて軽快に進み、これがオーケストラにより反復されてから、フルートによる新しい終結的な主題が提示され、これが提示部のエピローグに勢いよく発展していた。
    続いて展開部なしに再現部に移行していくが、この変化点で独奏ピアノが即興的なアインガングを入れながら再現部に突入していた。再現部ではほぼ型通りに提示部を再現していたが、エピローグの最後にカデンツアが組見込まれていたが、これはグルダによるもので、この楽章を回想するかのように主題が織り込まれていた。最後にピアノがフィナーレ主題に立ち戻り、全体を引き締めるように独奏ピアノが存在感を示しながら最後のコーダに突入し、この楽章を終結していた。ブラーボのかけ声とともに演奏は終了し、グルダは沢山の汗をかきながら、挨拶を繰り返していたが、最後に、着替えのために2分間だけ休みをくれと観衆にお願いして、楽屋に引き上げていた。
 U-tubeによるグルダの演奏(第三楽章)




     白のシャツに着替えたグルダが登場し、よく見るとベレー帽も色を変えており、いきなり左手でリズムを取るように和音を鳴らしながら中腰で指揮をして、「戴冠式」のニ長調のピアノ協奏曲K.537が始まった。この曲の第一楽章は、弦楽器で実に軽快なテンポで軽やかに第一主題が飛び出していくが、グルダも途中から立ち上がって指揮を始めていたが、やはり左手でピアノを弾いていた。やがて管楽器が加わり、テインパニーも響いて次第に盛り上がり、快調に進行して祝祭的な気分が盛り上がってきた。続いて明るい第二主題も弦楽器で軽やかに提示され、さらに新しい主題も加わって高まりを見せ、グルダはまさにこれが弾き振りの最高の醍醐味とばかり、歯切れ良くオーケストラを指揮しながら、長いオーケストラによる第一主題提示部を終えていた。



  続いてグルダのピアノが第一主題を丁寧に弾きだし、直ぐに華麗なパッセ−ジに引き継がれていくが、さすがにグルダは落ち着いており軽快にピアノの名人芸を披露していた。そこで独奏ピアノは止まらず、さらに新しい主題を提示して、引き続き独奏ピアノは技巧を示しながら華やかにそして変奏を加えながら走り回るように進行していた。独奏ピアノはさらに第二主題もご披露し、続けて賑やかなパッセージを示しながら進行していたが、最後にはオーケストラにバトンを渡し、歯切れ良く盛り上がって力強く提示部を終結していた。
 展開部では、この終結部のモチーブを中心に独奏ピアノが強烈な和音を重ねながら力強く進行するが、グルダのピアノはオーケストラと対等に堂々と華やかに対決しており、極めて充実感があった。再現部では、ここでもグルダの左手の和音とオーケストラで第一主題が始まるが、やがてピアノが引き継いでピアノのパッセージに入り、第二提示部の忠実な繰り返しのように進んでいた。カデンツアはグルダ・オリジナルか、初めて聴くものであったが、いかにも技巧に満ちた即興風で、いろいろな主題を装飾した回想風のものを弾いていた。
U-tubeによるグルダの「戴冠式」の演奏(第一楽章)



   この曲の第二楽章は、「戴冠式」の曲名を刷り込ませるいかにもモーツアルトらしい愛らしいラルゲットで、A-B-A'の三分形式の歌謡調。グルダの独奏ピアノが呟くように刻む単調なピアノが美しく、これをオーケストラが繰り返しした後に、独奏ピアノが変奏するかのようにころころと弾き進むフレーズが実に快く、ひとしきりピアノが歌った後に、再び冒頭主題がゆっくりと再現していた。独奏ピアノで始まる中間部の主題は対照的にリズミカルであり、グルダは多彩な装飾音を付けながら明るく賑やかに弾いていた。このグルダのペースは私には好ましいものであり、彼のセンスの良さを伺わせた。結びは冒頭の主題がさらりと繰り返され、カデンツアもなく静かに終了していた。
U-tubeによるグルダの「戴冠式」の演奏(第二楽章)



   フィナーレは、独奏ピアノにより軽快に飛び出すロンド主題がいかにもモーツアルト風の軽やかなアレグレットであり、オーケストラに渡ってこれぞモーツアルトのロンドと呼びたくなる名調子で始まるが、この主題がなかなか次ぎに現れない。どうやら、モーツアルトのフィナーレによくある気まぐれが現れたようで、ロンドの性格を持つ展開部を持たないソナタ形式と考えた方が良さそうだ。
軽快なロンド主題の後にオーケストラによる経過部が続いてから、グルダの独奏ピアノが歌うような新しい主題を掲げて走り出すが、オーケストラの手に渡り独奏ピアノとの競演がひとしきり続いて、オーケストラによる第二主題が始まった。独奏ピアノがこれを受け止め、装飾したり即興的に流したりして華麗なパッセージが縫うように進み素晴らしい効果を上げてから、一端フェルマータで停止した。スコアにはないグルダの手による派手なアインガングが短く入ってから、再び冒頭のロンド主題が独奏ピアノで飛び出した。再現部は提示部のほぼ忠実な反復のようであり、独奏ピアノが次々に新しい主題を提示しながら転がるようにピアノが突き進む。実に伸び伸びした楽しい気分に溢れており、ピアノのパッセージが華やかで明るい色調で終結していたが、グルダは最後のアインガングでこだわりを見せ、カデンツアのように回想しながらひとしきり遊んで、最後は冒頭の軽快なロンド主題で結ばれていた。
U-tubeによるグルダの「戴冠式」の演奏(第三楽章)

    歯切れのよい「戴冠式」に相応しいお馴染みの軽快なアレグレットで終結し、終わると大変な拍手が湧き起こり、この地域でのグルダの根強い人気を伺わせるように聞こえた。また、グルダはこのミュンヘンフイルのメンバーたちとはとても相性がよく、グルダのいい加減な指揮にも十分ついて行けるだけの親しみと力量を十分に備えていた。
両曲ともグルダがしたい放題の自由な伸びやかな弾き振りであったが、今回の演奏ではさすがに記録に残ることを意識したのか、グルダにしては、必要以上に崩したり、余分な装飾をつけたりは、していなかった。従って、両曲ともまずまずのグルダらしいモーツアルトであると思われ、私にはニ短調もまずまずであったが、「戴冠式」がとても楽しく聴けた。この曲の冒頭で、グルダは左手で和音を強く弾いて、オーケストラの響きを補強していたが、確かに効果があると思った。古楽器奏者がよく通奏低音的にピアノを弾くことがあるが、殆ど聞こえずその効果を確かめたことはなかったが、グルダの弾き方は、どう見ても通奏低音ではなく、はっきりと耳に響く弾き方であったと思う。

オペラのアップロードが収束に近づいたので、スコダ、エッシェンバッハ、グルダたちによるピアノ協奏曲の名曲のアップが、このところ続いている。演奏数が多いニ短調の協奏曲にしても、ペライアの2演奏とゲルバー、ピサレフの4演奏をアップすれば、完了になるところまで到達している。残されているのは、いずれもS-VHSテープで古くて写りの悪いものが多いが、今後は最新の収録曲と古いS-VHSの曲とを組み合わせてアップしていけば、バランスが良くなるものと考えている。この協奏曲シリーズは、当面、続けていきたいと思っている。

(以上)(2011/06/25)


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