(最新DVD報告;パドウラ=スコダのピアノ協奏曲ライブ(2)、K.459&K.537)
11-4-4、パウル・パドウラ=スコダとプラハ室内管弦楽団によるピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459および第26番ニ長調K.537、フィラッハ公会堂、ケルンテン夏季音楽祭2006、オーストリア、

−スコダの二枚目の二つの協奏曲の映像を見ると、80歳に近い老齢であるが元気よく指揮に、独奏ピアノに力強さを見せていたが、アップで見ると大忙しで、CDとは違うライブの難しさを示すように思われた。第19番のピアノ協奏曲の校訂者は、スコダ夫妻であり、改訂者本人のスコアを、本人自身のピアノで聴くことが出来たし、26番のニ長調の「戴冠式」は、トランペットやテインパニーを加えた本格的な印象に残る演奏であった−

(最新DVD報告;パドウラ=スコダのピアノ協奏曲ライブ(2)、K.459&K.537)
11-4-4、パウル・パドウラ=スコダとプラハ室内管弦楽団によるピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459および第26番ニ長調K.537、フィラッハ公会堂、ケルンテン夏季音楽祭2006、オーストリア、
(2011年3月4日、山野楽器店にて、株式会社マーキュリー、2枚組NCA-60229) 

   5月分の第一曲は、パドウラ=スコダの引き振りによるピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459および第26番ニ長調「戴冠式」K.537を取り上げる。これは4月中に余力があれば、11-4-4(2)としてアップしたかったのであるが、新しいオペラのDVDのために、5月になってからアップするものである。この二つの協奏曲の共通点は、共に「戴冠式」の名前を持つことで、これら二つの曲が同時に収録された例は非常に珍しい。第19番の協奏曲は、1784年12月11日の日付を持つが、この作品を最初に出版したウイーンのアンドレ社の標題ページに、モーツアルトが1790年10月15日に、神聖ローマ皇帝レオポルド2世の戴冠式に際してフランクフルトでこの曲を演奏したとあること、第二に自筆作品目録の楽器編成では、2トランペットとテインパニーを含んでいることから、第二戴冠式協奏曲と呼ばれるようになってきている。



   ところがエヴァとパウルが校訂した新全集では、期待を裏切って2トランペットとテインパニーが外されており、「戴冠式」K.537ではいたはずのプラハ室内楽団でもこれらの奏者はおらなかった。2004年1月25日にパウルの手で執筆された楽曲解説には、K.537のピアノ中心の曲に比して、K.459はピアノと管楽器パートが活発に対話する内面的な曲と位置づけているようだ。「戴冠式」説を否定した明確な理由は、新全集の長い校訂経緯を読破しなければならないが、これは専門家の手に委ねたい。しかし、ヘ長調の作品にトランペットを用いた例はないようであり、これも根拠の一つとされているようである。



   スコダが座りながら両手で指揮を開始すると、第一楽章のあの行進曲風のリズミカルな第一主題が軽やかにオーケストラでゆっくりと開始された。やがて木管が加わって勢いを増しながら、この主題は展開されていくが、このリズミカルな動機が常に全体を支配しつつ、第二主題らしきものが見当たらないままオーケストラの主題提示部が終わっていた。やがてスコダの独奏ピアノがこの第一主題を一通り明確に提示すると、オーボエとファゴットがこの主題を奏で始めてから、ピアノは第二主題を提示し始めた。ここでもフルートとオーボエが新しい主題の主役を演じてからピアノの出番となり、やがて独奏ピアノは急速に流れ出し、スコダのピアノが生き生きとして走り回って提示部の盛り上がりに繋がっていた。
   展開部では独奏ピアノによる華やかなパッセージが鋭く繰り返されて始まり、見事な技巧を見せて走り回っていたが、勢いが静まるといつの間にか再現部が始まっていた。カデンツアは新全集にある聞き覚えのあるものをそのまま使っていた。



   第二楽章は、オーケストラでさり気なく始まり、美しい8分の6拍子のアレグレットの第一主題の全体を堂々と奏でていた。やがて独奏ピアノがこの主題を美しく繰り返していくが、呟くようなピアノに木管が伴奏をして何と美しいことか。やがてフルートとファゴットがカノン風に主題を変奏するが、そこにピアノも加わって木管とピアノとの素晴らしい対話が現れる。更にオーボエが先行しフルートが追従する新しい主題が始まり、ピアノが引き継いだ後、再び木管とピアノとオーケストラの新しい色彩豊かな対話が繰り返され、素晴らしい境地に誘われてしまう。スコダはきめの粗いピアニストであったが、ここではいかにも慎重に対話を重ねていた。途中から第二部に入り、ピアノ中心にこれまでとほぼ同じ形で繰り返されていたが、カデンツアなしで終わるのもピアノが独りよがりに終わらないこの楽章の結びとして相応しいように思えた。



    フィナーレは独奏ピアノによって軽快なロンド主題が飛び出すロンド形式で始まった。木管が早いテンポで繰り返し、再びピアノがロンド主題を弾いて木管が続いてから、突然オーケストラでフガート主題が現れた。フルオーケストラで弦がひとしきり歌ってから、独奏ピアノが第一クープレで新しい主題を歌い出す。この主題から再びロンド主題に移行していくが、ここでの独奏ピアノの勢いは止まるところを知らず一気に進んでいた。再びピアノでロンド主題が部分的に示されてから、ピアノが再び絢爛たる動きを見せながら第二クープレに入り、ピアノと木管が流れるように歌っていた。この楽章は、506小節にわたる大曲で、再びフガート主題が登場しピアノも加わって堂々たる勢いを見せた後、ロンド主題が再現していた。長いカデンツアも甚だ技巧的で、スコダの忙しそうなぎこちないピアノが披露されてから、軽やかに終結していた。

   スコダの弾き振りの演奏を振り返って、この曲は第17番、第18番、第19番と続く1784年の一連の作品に共通する特徴が漲った曲であると痛感せざるを得なかった。特に第一楽章の行進曲風の進行や、独奏ピアノと木管やオーケストラとの三つ巴の進行などに、これら3曲の共通性が伺われると感じてきた。この曲には、ベーム・ポリーニ(1976、7-7-3)ジンマン・ルプー(1990、6-8-2)、、マルコム・シフ(1996、3-4-3)、などの優れた演奏がアップ済みであったが、弾き振りはスコダだけであり、この曲を落ち着いて演奏したり聴いたりするには、専念する指揮者が居られた方が安心して聴けることを実感した。「第二戴冠式」のスタイルの演奏があったのではないかと改めて聞き比べてみたが、やはりトランペットとテインパニーを付加した別紙の譜面が紛失したせいか、いずれも新全集通りの版で、カデンツアもいずれも共通であった。



   続いて第2曲はピアノ協奏曲第26番ニ長調「戴冠式」K.537であり、画面ではスコダがにこやかな表情で登場し、ピアノの前に立って指揮を開始した。この曲の第一楽章は、弦楽器で実に軽快なテンポで軽やかに第一主題が飛び出していくが、やがて管楽器が加わり、テインパニーも響いて次第に盛り上がり、快調に進行して祝祭的な気分が盛り上がってきた。続いて明るい第二主題も弦楽器で軽やかに提示され、さらに新しい主題も加わって高まりを見せ、スコダはこれぞ弾き振りの醍醐味とばかり、途中から座って歯切れ良く力強くオーケストラを指揮しながら、長い第一提示部を終えていた。



   独奏ピアノが登場し、始めから装飾を付けながら第一主題を弾き上げ、直ぐに華麗なパッセ−ジに引き継がれていくが、スコダのピアノは急ごうとするせいか余り粒建ちが良くない。しかし、新しい主題とともにピアノは技巧を示しながら華やかにそして変奏を加えながら走り回るようなピアノが進行していた。第二主題に突入してもピアノの勢いはオーケストラとともに軽快さが継続し、歯切れ良く盛り上がって提示部を終結していた。
   展開部では、この終結部のモチーブを中心にピアノが強烈な和音を重ねながら力強く進行するが、スコダのピアノはオーケストラと対等に堂々と華やかに弾きまくり充実感があった。再現部では、オーケストラで第一主題から始まるが、直ぐにピアノが引き継いでピアノのパッセージに入り、第二提示部の忠実な繰り返しのように進んでいた。カデンツアは初めて聴くものであったが、いかにも即興風で、第一主題と第二主題の一部を装飾した回想風の短いものであった。



   この曲の第二楽章はいかにもモーツアルトらしい愛らしいラルゲットで、A-B-A'の三分形式の歌謡調であった。独奏ピアノが呟くように刻む単調なピアノが美しく、オーケストラで繰り返された後、ピアノが変奏するようにころころと転がるように弾き進むフレーズが実に快く、聴くものをほっと和ませる。再び冒頭主題の再現の後、ピアノで始まる中間部の主題は対照的にリズミカルであり、スコダは装飾音を付けながら明るく多彩に弾いていた。私にはもっとゆっくりと丁寧に味わうように弾いて欲しいと思うのであるが、ライブで弾き振りの悲しさかこの演奏ではままならなかった。結びは冒頭の主題がさらりと繰り返され、カデンツアもなく静かに終了していた。



   フィナーレは、独奏ピアノにより軽快に飛び出すロンド主題がいかにもモーツアルト風の軽やかなアレグレットであり、オーケストラに渡ってこれぞモーツアルトのロンドと呼びたくなる名調子で始まるが、この主題がなかなか次ぎに現れない。どうやら、モーツアルトのフィナーレによくある気まぐれが現れたようで、ロンドの性格を持つ展開部を持たないソナタ形式と考えた方が良さそうだ。オーケストラによる経過部が続いた後に独奏ピアノが歌うような主題を掲げて走り出すが、オーケストラの手に渡り独奏ピアノとの競演が続いて、オーケストラによる第二主題が始まった。独奏ピアノがこれを受け止め、装飾したり即興的に流したりして華麗なパッセージが縫うように進み素晴らしい効果を上げてから、一端フェルマータで停止した。スコアにはないスコダによる独奏ピアノの派手なアインガングが簡潔に入ってから、再び冒頭のロンド主題が独奏ピアノで飛び出した。再現部は提示部のほぼ忠実な反復のようであり、独奏ピアノが次々に新しい主題を提示しながら転がるようにピアノが突き進む。実に伸び伸びした楽しい気分に溢れており、ピアノのパッセージが華やかで明るい色調で終結し、アインガングの後、冒頭のロンド主題で結ばれていた。

スコダは80歳に近いお歳には見えぬ元気の良さで、木目の細かさは今一つであったが、勢いに乗って速いパッセージをこなして、晴れ晴れとした表情でこの楽章を終えていた。この堂々とした充実感のある「戴冠式」の演奏がコレクションに加わって、印象に残る演奏がまた一つ増えたと喜んでいる。
   スコダの4曲のピアノ協奏曲が加わったので、ピアニストとしてのスコダの演奏を全て検索できるようにしたいと考えた。また、ピアノ協奏曲第18番変ロ長調K.456「パラデイス」は、このHP初出だったので、リストに加えると共に、他の3曲のピアノ協奏曲のデータベースの追加修正を行っているので、チェックしていただきたいと思う。

(以上)(2011/05/28)


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