(最新DVD報告;パドウラ=スコダのピアノ協奏曲ライブ(1)、K.271&K.456NEW!)
11-4-1、パウル・パドウラ=スコダとプラハ室内管弦楽団によるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」および第18番変ロ長調K.456「パラデイス」、フィラッハ公会堂、ケルンテン夏季音楽祭2006、オーストリア、

−スコダの二つの協奏曲の映像を見ると、彼のような熟達した老練なピアニストでも、第一楽章やフィナーレの早いテンポのところでは、アップで見ると大忙しで、大変であった様子を窺うことが出来、CDとは違うライブの難しさを示すように思われた。第18番のピアノ協奏曲の校訂者は、スコダ夫妻であり、改訂者本人のスコアを、本人自身のピアノで聴くと言うことは初めての経験であった。−

(最新DVD報告;パドウラ=スコダのピアノ協奏曲ライブ(1)、K.271&K.456NEW!)
11-4-1、パウル・パドウラ=スコダとプラハ室内管弦楽団によるピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」および第18番変ロ長調K.456「パラデイス」、フィラッハ公会堂、ケルンテン夏季音楽祭2006、オーストリア、
(2011年3月4日、山野楽器店にて、株式会社マーキュリー、2枚組NCA-60229、)

   4月号の第一曲は、最新入手のDVD報告として、パドウラ=スコダ(1927〜)のピアノ協奏曲ライブ4曲2枚のDVDを一枚ずつ取り上げることとした。これは2006年のモーツアルト・イヤーにおけるケルンテルン音楽祭におけるライブ録音である。スコダは、グルダ、デムスと並んでウイーン三羽烏と言われた今となれば老齢のピアニストである。音楽学者としても有名で著作もある研究家・新全集の校訂者の一人でもあるが、既に80歳に近いのにすこぶるお元気で、ベーゼンドルファーを力強く弾き振りしており、DVDには彼の自筆の楽曲解説が添付されていた。11-4-1で(1)として第9番「ジュノム」K.271および第18番変ロ長調K.456を取り上げるが、第18番はこのHP初出のピアノ協奏曲であり、非常に期待している。また、4月中に余力があれば、11-4-4(2)として、第19番ヘ長調K.459および第26番ニ長調「戴冠式」K.537を取り上げたいと考えているが、彼の4曲の選曲の仕方も面白く、期待を呼ぶシリーズであった。 



   第一曲目は、ピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジュノム」であり、スコダは正面中央に置かれたベーゼンドルファーに向かい観客に背を向けた格好で座ると、いきなり第一楽章がオーケストラのトッテイとピアノソロで交互に始まった。この冒頭のソロピアノはこの曲独自のもので、二度現れてお客を驚かせてから、オーケストラが軽快に明るく第一主題を提示していた。続いてすこし暗い感じの第二主題を流して提示部を終えてから、長いトリルを響かせながら独奏ピアノが登場してきた。そして直ちに独奏ピアノが第一主題を力強く弾きだし、華やかに16分音符のパッセージを弾き出した。スコダのピアノは堂々と力強く弾かれ、続く第二主題も独奏ピアノが弾むように提示してスコダのペースとなって進んでいた。スコダに言わせれば、この曲のピアノソロとオーケストラの対話の役割分担、すなわち「呼ぶ側」と「答える側」が非常に明確であり、オーケストラに現れる楽想の全てがピアノパーツに現れるという。
   展開部では、最初と同じ始まりでオーケストラとピアノが登場してから、冒頭の同じ旋律がピアノで執拗に形を変えて展開され、スコダのピアノが丁寧に元気よく繰り返されて再現部に移行していた。ここでも「呼ぶ側」と「答える側」が互いに入れ替わりながら対話を行い、素晴らしいピアノとオーケストラの掛け合いが続いていた。カデンツアは新全集には二つ用意されていたが、Bの長い方を使っていた。



    第二楽章はアンダンテイーノのハ短調のヴァイオリンの合奏で始まるもの憂い感じの序奏で開始されるのが珍しい。続いて第一主題がピアノソロでゆっくりと始まり、絶えず装飾をつけながら綿々と続いてから、ヴァイオリンに始まり独奏ピアノが応える第二主題が登場し、そのまま独奏ピアノが綿々とオーケスオラと対話しながら進行する美しい曲となっていた。スコダは、この曲の名品であるハスキルやケフェレックのピアノに較べて、ゆっくりとしたソロピアノの音出しが荒っぽく、もっと粒だちの良いピアノで一音一音丁寧に弾いて欲しいと思った。短い独奏ピアノが華やかな展開部が終わると、序奏なしで再現部が始まり、第一主題、続いて第二主題の順に再現されていた。新全集では二つのカデンツアが示されているが、スコダはBの長い方のカデンツアを弾いていた。



    フィナーレは独奏ピアノによる軽快なロンド主題がプレストで始まるが、スコダはこの右手の早い分散和音が早すぎて、後半は粒ぞろいのパッセージにならずちょっと残念だった。オーケストラとピアノでこの主題が更に展開された後、右手と左手が交錯する次の主題がピアノソロで早いテンポで始まりオーケストラとも協奏されていく。ここでロンド形式のA-Bと続いてきたが、続いて短い第一のアインガングが入りハッとするが、間もなく始めと同じスタイルで長い独奏ピアノによるロンド主題Aが始まった。オーケストラとピアノで早いテンポでロンド主題が展開されて終息すると、A-B-A-Cの部分が始まり、これが何とカンタービレの美しいメヌエット。美しい主題が流れ出し、やがてピッチカートのオーケストラを従えてゆっくりとピアノが進行し、スコダは気持ちよさそうに弾いていた。このメヌエットではピアノが変奏曲のように弾かれて、しばしの安らぎのように表情豊かに響きこの曲の素晴らしさを伝えていた。ここでも一区切りを示すような短い第二のアインガンクが弾かれてから、再び最初のロンド主題に戻っていた。最後のA'-B'-A"では、ピアノが良く動き回ってフイナーレを盛り上げてからさり気なく終息していた。
スコダの「ジュノム」協奏曲の映像を見ると、彼のような熟達した老練なピアニストでも、第一楽章やフィナーレの早いテンポのところでは、アップで見ると大忙しで、大変であった様子を窺うことが出来、CDとは違うライブの難しさを示すように思われた。この曲は、ピリス・ケフェレック・内田光子・アックス・小曽根真・スコダの6人の映像で聴くことが出来るが、この曲にはピアノの繊細な指使いが要求されるようで、私には、最初に上げた三人の女性ピアニストの演奏が、いずれも指揮者がおり、特に優れていると思った。

    エヴァとパウルのバドウラ=スコダご夫妻は、新全集において第17番ト長調K.453、第18番変ロ長調K.456、および第19番ヘ長調K.459の三曲の校訂者であり、今回の演奏曲4曲中18番と19番が自分たちが校訂した版を弾いていた。この3曲は、前3曲とともに1784年に書かれており、第18番K.456は9月30日の日付を持ち、盲目のピアニスト、マリア・テレジア・パラデイスの依頼によって作曲されていた。この曲のウイーン初演は1785年2月13日にブルク劇場でイタリア人女性歌手ルイーザ・ラスキの演奏会でモーツアルト自身により初演されており、父レオポルドが立ち会ってナンネルに書かれた手紙(2月26日書簡)によると「皇帝ヨーゼフ二世も臨席して、ブラボー!モーツアルト」と叫ばれたという。スコダはこの曲には「女性的」とも呼びうるような優しい性格が全体を包んでいると述べており、依頼者が盲目であることを考慮して、音程を大きく跳躍せねばならぬ箇所はないし、左手が右手の上を越えていくようなところもないと指摘している。



   ピアノ協奏曲変ロ長調(第18番)K.456「パラデイス」の第一楽章は、協奏風のソナタ形式を取り、この年の協奏曲を通じてお馴染みの行進曲風のリズム動機を持つ第一主題が、アレグロ・ヴィヴァーチェの弦楽合奏で堂々と始まり、管楽合奏に渡されてからフルオーケストラで流れるように進行していた。スコダは初めて立ち上がって指揮をし始めたが、オーケストラが流れ始めると椅子に座って、ピアノで熱心に合奏していた。続いて2本のオーボエが歌い出しフルートが相づちを打つように始まる第二主題が木管中心に進行し、繰り返されて賑やかに力強く発展していた。やがて第一ヴァイオリンによるお馴染みの結びの音形が現れてトウッテイの提示部を締めくくっていた。
    独奏ピアノが入った第二の提示部はかなり拡大されており、ソロピアノで第一主題が元気よく提示されて、独奏ピアノによる走句が鍵盤を駆け巡り、続いて第二主題もピアノソロが勢いよく提示していた。スコダのピアノはやや荒っぽさがあるが威勢が良く、次から次へと始まる速いパッセージを無難にこなしていたが、オーボエで始まる第二主題でオーケストラが主役になりかけても、独奏ピアノが引き継いで、提示部の後半を盛り上げていた。展開部では独奏ピアノが新しい主題を提示しながら力強いパッセージを重ねて行くが、これが先の結びの音形のリズムであり、この動機を木管が示しながら独奏ピアノが威勢の良い奏句を重ねるように進行していた。再現部はオーケストラで行進曲風に始まるが、直ぐに独奏ピアノが長いトリルを響かせながら登場してきて主役になり、以降は第二提示部とほぼ同様な独奏ピアノ主体のペースで第二主題へと進んでいた。カデンツアは、新全集に載せられたものをそのまま弾いていた。





    第二楽章は珍しくト短調の変奏曲形式であり、バルバリーナの「フィガロの結婚」の第4幕冒頭のカヴァテイーナ「無くしてしまって困ったわ」のソックリさんの主題による五つの変奏曲である。主題はオーケストラで溜息をつくような第一ヴァイオリンで始まるが、スコダは右手でオーケストラを指揮し、左手で通奏低音を弾いていたが、この通奏低音のピアノの音が珍しく良く聞こえていた。後半から管楽器が加わって美しい主題を提示していた。第一変奏は独奏ピアノによる音形変奏であり、早いテンポの切れの良いピアノが終始転げ回る素晴らしい展開であった。第二変奏は前半が管楽器で主題提示され、後半は弦とピアノが早いテンポで受け持つものであったが、ここからは繰り返し記号を使わずに自由に変化を加えながら繰り返しを行っていた。第三変奏はフルオーケストラによるリズミックな元気の良い主題提示のあと独奏ピアノがリズミックに変奏するもので、後半にはさらに変化を加えながら、フルオーケストラとピアノソロが明るく繰り返すように力強く活躍していた。第四変奏はト長調で明るく木管で変奏された後、弦とピアノが模倣するもので、後半も変化を加えながら木管合奏と弦とピアノによる明るい変奏が続いていた。第五変奏は再びト短調に戻り、弦の主題伴奏にピアノが装飾を付けながら絡んでいく変奏で、途中からコーダになり、美しい主題の余韻を残しつつ静かに終結していた。このアンダンテ楽章ではスコダは余裕があり、指揮にピアノに自在の音色の変化を見せていた。





    第三楽章は典型的なロンド・フィナーレのように聞こえるが細かく楽譜を見ると、いろいろな変化を持ったロンド形式であることが分かった。冒頭のロンド主題は独奏ピアノで軽快に始められてからそのままオーケストラが繰り返していくが、このオーケストラは主題をさらに発展させて盛り上がってから、第一クープレの前半が独奏ピアノと管楽器で現れていた。しかし暫くして後半に別の旋律がピアノソロで現れて繰り返されてから、今度は管楽器が引き継いで景気を付けて、最後には独奏ピアノが颯爽と仕上げをして、フェルマータになってからピアノの短いアインガングが始められていた。    再び冒頭のロンド主題が独奏ピアノでオーケストラで再現してから、今度は第二クープレが独奏ピアノで華々しく開始されていた。これはまさにピアノソロの独壇場の世界であり軽快に進められているうちにいつの間にか第一クープレの二つの旋律が顔を出してカデンツアとなっていた。カデンツアは新全集に記載のものであり、技巧を凝らした早いテンポのもので、老齢なスコダには酷のようなアレグロ・ヴィヴァーチェのフィナーレであった。






   第18番のピアノ協奏曲は、初めてアップするのでスコアを見ながら丁寧に聴いていたが、改訂者本人のスコアを、本人自身のピアノで聴くと言うことは初めての経験であった。もう一枚のDVDにある第19番もスコダの校訂版であり、やはりスコアを見ながら丁寧に聴いてみたいと思う。    終わりにスコダが、オイストラフが弾いたヴァイオリンソナタのピアノ伴奏をしていたと記憶していたので、調べてみると4-4-2として間違いなくアップロードしていた。また、ピアノ協奏曲第18番のデータベースを作成していたら、スコダがブリュッヘンの指揮で演奏している映像があったが、この映像も2-3-2として、オイストラフとスコダのヴァイオリン変奏曲K.360とともに、既にファイル化してあったのに気がついた。2001年に作業していた頃のものであり、完全に失念していたので、お詫びしたいと思う。改めてスコダの二組の演奏を比較してみたが、ブリュッヘンの指揮も素晴らしいが、スコダもピアニストとして専念していた方が遙かに演奏にゆとりがあり、格調高く弾いていたように感じられた。

(以上)(2011/04/08)


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