(懐かしいLDより;東独ドレスデン歌劇場のTV映画の「コシ」K.588、)
11-3-2、ハンス・フォンク指揮ヨアヒム・ヘルツ演出、ドレスデン歌劇場によるTV映画方式の「コシ・ファン・トッテ」K.588、1983年10月、東ドイツ、

−この映像はドレスデン歌劇場の歌手陣によるドイツ語のオペラ映画であるが、そのせいか指揮者やオーケストラや歌劇場の姿はなく、専ら演技上手の主役6人と合唱団によるスタジオでの室内劇となっていた。その演出は東独の巨匠ヨアヒム・ヘルツによるものであり、こじんまりしたスタジオで、歌よりも劇に重点をおき、歌手たちの内面やアンサンブルに重きを置いた進め方であって、結果的に色彩が美しく、クローズアップが多い優れたTV用映像となっていた−

(懐かしいLDより;東独ドレスデン歌劇場のTV映画の「コシ」K.588、)
11-3-2、ハンス・フォンク指揮ヨアヒム・ヘルツ演出、ドレスデン歌劇場によるTV映画方式の「コシ・ファン・トッテ」K.588、1983年10月、東ドイツ、
(配役)フィオルデリージ;アーナ・プサール、ドラベラ;エリーザベト・ヴィルケ、デスピーナ;コルネリア・シャイブナー、フェランド;アルミン・ウーデ、グリエルモ;アンドレアス・シャイブナー、アルフォンゾ;ヴェルナー・ハーゼロイ、
(1990年12月10日新譜購入、東映ビデオ、ドリームライフ、LSZS-00193、3面)

   3月号の第2曲は、懐かしいLDから東独ドレスデン歌劇場のTV映画の「コシ」K.588をお送りする。これはスタジオでテレビ用に収録した「コシ」で、東独のフェルゼンシュタイン流のドイツ語によるコミッシェ・スタイルのものであり、許婚同志の組み合わせが最後までどうなるか気を持たせる細かな演出など、発売当時はとても斬新な面白い「コシ」と受け取られていた。東独時代のドレスデン歌劇場は、一昨年見てきたゼンパー歌劇場の前身であろうが、今回LDでその実力を見ることになった。「コシ」の映像はこれで18組を見てきており、異色の「コシ」とされたポイントを改めて見直してみたいと考えていた。



   画面は思わせぶりなビリアードの二つづつの白と赤の球とともに序曲が始まった。白と赤の組み合わせが変わったり、軽快な序曲の進行とともに微妙にふっついたり、このオペラの何かを暗示していた。場所は軍隊の社交クラブか、赤白の派手な軍服を着た兵隊さんたちが賑やかに騒いでいると、途中から大きな声となり、にわかに険悪となって「剣を抜け」と三重唱が始まっていた。一人だけ軍服でないアルフォンゾが、わしは平和主義者だと言い、「女の貞節なんて不死鳥と同じ」と歌い出し、二人の兵隊の恋人たちをからかっていたが、「賭けようか」の声にアルフォンゾと二人の兵隊さんが賛成し、二人は勝ったつもりで鼻歌まじりのセレナード歌い出し、愛の女神に乾杯と叫んでいた。早口のドイツ語でやり取りする様子はオペラと言うより室内劇の感じで、物語は実に巧みに進行していた。



   一方の二人の恋人たちは、素敵な一室のソファーの上でまどろみながら「妹よ」と歌い出していた。互いに自分の恋人たちを自慢し合って、幸せそうに二重唱を歌っていたが、「男達が遅い」と心配になったところへアルフォンゾが顔を出していた。アルフォンゾは「ひどい運命だ」とアリアを歌いながら、「王の命令で恋人たちが召集された」という。赤い軍服を着た男二人が「足が進まない」と歌いながら顔を出したので、グリエルモとフィオルデリージ、フェランドとドラベラの二組の恋人たちが抱き合って美しい五重唱で別れを惜しんでいた。だが、良く見ると悲しんでいるのは姉妹だけで、男二人はどうだと喜んでおり、アルフォンゾは今に分かると笑っていた。



   アルフォンゾが合図をすると、太鼓の音がして、「さあ、出発だ」となって大勢の人達が集まってきて「軍隊万歳!」の合唱となっていた。恋人たちは「毎日、お手紙してね」とピッチカートの美しい伴奏に乗って歌いながら別れを告げ、アデイーオの五重唱となって いたが、再びあの忌まわしい「軍隊万歳!」の合唱が始まり、男二人は船に乗って出発してしまった。残された姉妹は、船を見送りながら「風よ穏やかに、波よ静かに」と歌い、実に美しい三重唱になって、アッと言う間の運命の分かれに驚いていた。しかし、一方のアルフォンゾは「わしも役者だな」舌を出して次の準備に入っていた。



   場面が変わって姉妹の女中のデスピーナが登場し、「女中なんて最低」とぼやきながら登場し、朝食のチョコレートを失敬していると、姉妹が戻ってきて何やら様子が変。ドラベラが駆けつけてきて「お下がり!」と大声を上げ、何やらアリアを歌い出した。「この悩みを誰が知ろう。一人にして」と狂ったように歌っており、まさに半狂乱のアリアであった。ところがその理由を聞いたデスピーナは、「直ぐに戦場から戻りますわ」と平気な顔。「男なんかみな同じ」と言い、「兵士に貞節を求めるなんて」と歌い出し、「留守中に浮気して楽しんだ方が良いわ」と踊り出して、終いにはドラベラも一緒に踊っていた。デスピーナは、姉妹より若そうに見えたが、なかなかませているように見えた。



   一方、アルフォンゾは、デスピーナを味方にした方がよいと考え、お金をちらつかせると、早速、乗ってきた。姉妹の様子を訊きだし、二人に会わせたい外国人がいると持ちかけると、お金持ちなら会っても良いという。そこで、鬚ずらのアルバニア人に変装した男二人をデスピーナに会わせると、彼女はどこの国の人?と驚いていたが、グリエルモとフェランドであるとは気がつかなかった。変装は成功だとばかりに四重唱で騒いでいると、そこへ姉妹が登場して六重唱になっていた。男がいると大騒ぎになるが、アルフォンゾの親友だと言うことが分かり改めて姉妹に紹介されたが、すぐにしつこく求愛を始めたので、汚らわしいと姉妹はおお怒り。フィオルデリージはお姉さんらしく凛とした態度で「岩のように微動だにしない」と歌い出した。後半には激しいコロラチューラの技巧を聞かせて素晴らしいアリアとなっており、男二人を寄せ付けなかった。
 グリエルモはもう少し心を開いてと「愛しい瞳よ」とウラウラの愛のアリアを歌い出して姉妹に迫り、ドラベラは鬚ずらのグリエルモに気を取られ始めていたが、途中で慌てて姉妹が逃げ出してしまったので、男二人の大笑いのアリアとなり、アルフォンゾも加わって三重唱となっていた。一方の真面目なフェランドは、「愛のそよ風よ」とドラベラへの愛を誓うアリアを歌っていた。アルフォンゾは姉妹の頑なな様子を心配しデスピーナに意見を求めると、彼女は姉妹のことは任せてくれと張り切っていた。




   フィナーレに入ってホルンの伴奏を持った美しい音楽が聞こえ、姉妹が「たった一瞬の間に運命が変わってしまった」と悲しげに二重唱を歌っていたが、そこへ突然男二人が現れて、アルフォンゾの止めるのを聞かずに砒素の入った毒薬を飲んで倒れ込んでしまった。さあ大変。姉妹はデスピーナを呼び、まだ息があるから助けようとなり、姉妹は心音を確かめたり、呼吸を調べたりしていたが、この時にはドラベラがグリエルモを助け、フィオルデリージがフェランドを助けて、相手が変わっていた。




   そこへデスピーナのお医者さんが駆けつけて、メスマーの磁石を二人に向けると、二人は震えながら動きだし、何とか息を吹き返したようだった。しかし、毒が効いているせいか、目を覚ますと介抱してくれた姉妹が女神に見えてしつこく愛を迫るので、姉妹は次第に苛立ち始めた。音楽が早いテンポに変わり、元気を取り戻した男達が立ち上がって、姉妹にキスを求めだしたので、姉妹は遂に怒りだし、逃げ出してしまったので、場面は大笑いのなかで幕となっていた。




   第二幕はデスピーナが悲しんでいる姉妹を慰めて、恋人たちが戦場でお留守なら、こちらは「新兵募集」をしたらと浮気の奨めをして、チェンバロの伴奏で「女が15歳にもなれば」と高らかに歌い出し、女王様のように振る舞えなど男との付き合いのコツをレクチャーした。この奨めが効いたのか、姉妹はご機嫌になり、気晴らしをするのも悪くないという話から、ドラベラが「私はあの黒髪さん」と歌い出すとフィオルデリージも「私はあの金髪さん」と明るく歌い出し、思い思いの楽しい二重唱になっていた。そこへアルフォンゾがタイミング良く、お庭にどうぞと姉妹を誘いに来た。





   何事かと姉妹が外に出ると、甘い木管のセレナードが聞こえてきて、何やらお祭りのよう。男二人が着飾って「そよ風よ、聞いておくれ」と二重唱を歌い出しており、「あの人にこのため息を届けておくれ」と歌っていた。しかし、姉妹の前では、男二人は何も語れない。そこでアルフォンゾとデスピーナがお手本を見せることになり、アルフォンゾは、「後悔しています。もう迷惑は掛けません。出来ることは何でもやります」と言って男二人に反復させた。デスピーナは「過去のことは忘れましょう」と姉妹に語り、お互いの手を握らせて、ここに新しいカップルが誕生していた。男達の思いとは異なり、姉妹は別の相手を選んでおり、男達を驚かしていた。




  「良いお天気ですね」などと4人のぎこちない会話が始まって、フェランドがフィオルデリージの手を取って歩き始め、小舟に乗せて二人で出かけてしまった。驚いたグリエルモが様子を見ていると、ドラベラがどうしたのと催促をし、心配で死にそうだというグリエルモを、死んだふりをしても騙されないと言い返し、二人の中もほぐれて来た。もしかしてと、グリエルモがハートのペンダントを差し出すと嬉しそうにしており、くどいているうちに受け取ってしまった。驚いてグリエルモが「ハートを差し上げます」と歌い出すといつの間にか愛の二重唱となり、グリエルモが甘い声で囁きながらドラベラの目をつぶらせ、ペンダントを交換してしまった。ドラベラは生まれ変わったように積極的になり、二重唱の終わりには二人は抱き合ってしまっていた。




   「どうして逃げるのです」とフェランドがフィオルデリージを追いかけると、蛇だトカゲだと言ってフィオルデリージが逃げ、「あなたが怖いのです」とレチタテイーボで歌いながら「困らせないで」と言い、一人になってから「愛しい人よ、お許し下さい」とロンドを歌い出した。そして二つのホルンが響きだし、フェランドを愛しく思い出した自分の弱い心を、許してくれと歌っていた。「われわれは勝ったぞ」とフェランドが得意げにグリエルモに報告するが、フェランドは自分のペンダントを見せられて半狂乱。どうしたらよいかと責められて、グリエルモは「女どもは良く浮気をする」とアリアを歌っていたが、続くフェランドの「裏切られ、踏みにじられても、彼女が好きだ」と歌う第27番のカヴァテーナは省略されていた。




   ドラベラがデスピーナを相手に贈り物のペンダントを自慢しているところへ、フィオルデリージが現れて、何と「二人とも愛しているの」と告白した。それを聞いてドラベラは大喜び。早速、「恋は盗人、恋は誘惑の蛇」と歌い出し有頂天。しかし、フィオルデリージは深く悩みながら、ふと思いつき、デスピーナにグリエルモの軍服と剣と帽子を持って来させ、それを来て戦場に行こうとして、「もう少しの辛抱で、あの人に会えるわ」と歌い出した。その姿を見ていたフェランドが「私は死んでしまう」と二重唱になって、フェランドは「愛か、さもなくば死か」とフィオルデリージに必死で迫り、困ったフィオルデリージはオーボエの伴奏とともに「あなたの勝ちよ、好きなようにして」と言わせてしまった。それを見ていたグリエルモは愕然としてアルフォンゾの言いなりとなり、「結婚するんだ」の言葉に同意し、男三人は声を揃えて「コシ・ファン・トッテ」と叫んでいた。



   フィナーレに入り軽快な伴奏に乗ってデスピーナが手際よく結婚式の準備を開始し、大勢の合唱団員が手伝っていた。やがて「二人の新郎に祝福を」と合唱が始まり、正装した主役の4人が一人ずつ姿を現してきた。4人がテーブルの前に立ち喜びの合唱をしてから、グラスを手にしてから改めてテーブルに着席し、ラルゲットになって初めにフィオルデリージが「私とあなたのグラスの中に全ての思いを沈めましょう」と歌い出し、続いてフェランドがカノン風に歌い始め、ドラベラも歌い出して素晴らしい三重唱になっていたが、ショックを受けたグリエルモは一人だけ離れて歌っていた。そこへデスピーナが扮する公証人が現れて賑やかに結婚証明書を読み上げ、皆がサインをした時に、あの忌まわしい「軍隊万歳!」の合唱が聞こえてきた。



   様子を見に行ったアルフォンゾが、あの恋人たちが帰ってくると言う。さあ大変。大慌てで二人の新郎を隠し、式場の片付けをしていると、赤い軍服姿の二人が元気よく戻ってきたが、姉妹は突然で声も出ず、何か様子がおかしい。すると公証人がデスピーナであったり、結婚証明書にサインがあったり、おかしなことばかり。遂に姉妹が「あなた、悪いのは私です」と謝って、「殺して」となっていた。続いて、姉妹は「悪いのはこの人よ」とアルフォンゾが責められているうちに、二人の鬚のないアルバニア人が登場して、初めて姉妹は、男ども三人に騙されていたことが分かった。アルフォンゾは「確かに私のせいだが」と語りだし、「お陰で恋人たちは前より遙かに賢くなった筈だ」と言い訳をして、4人とも抱き合って一緒に笑おう」と結んでいた。
   音楽が早いテンポに変わり主役6人が集合して一列に並び、めでたしめでたしとなっていたが、二組の恋人たちは、結局は元の鞘に納まってにこにこしていた。



   この映像はドレスデン歌劇場の歌手陣によるドイツ語のオペラ映画であるが、この歌劇場での初演は1983年5月23日に行われたものを、同年10月末に初演メンバーと同じでスタジオ収録されたものとされる。そのせいか指揮者やオーケストラや歌劇場の姿はなく、専ら演技上手の主役4人と合唱団によるスタジオでの室内劇となっていた。その演出は東独の巨匠ヨアヒム・ヘルツによるものであり、こじんまりしたスタジオ設営であり、歌よりも劇に重点をおき、歌手たちの内面やアンサンブルに重きを置いた進め方であって、衣裳や小道具などは派手で細かいところにも気が配られていた。結果的に得られた映像では、色彩が美しく、クローズアップが多い優れたTV用映像と思われたが、最近のハイビジョン映像を見慣れたものには映像のピントが甘いのが気になり、音声のレベルが低く冴えない音質であった。



   指揮者のハンス・フォンク(1942〜2004)はオランダ出身の名匠であり、ドレスデンでは85年から90年にかけてオペラとオーケストラの首席指揮者として活躍した。晩年に闘病生活を続けながらライブ録音を続けた記録が残されている。このオペラでは姿は見えないながらも、地味ではあるが伝統的な落ち着いた指揮振りを見せていた。音楽面では通常省略される第7番と第24番のアリアのほかに第27番のフェランドのアリアが省略されているほか、ドイツ語の会話によりレチタテイーボの省略ないし短縮化が図られていた。

   この映像の男女の愛のもつれの演出は、東独のフェルゼンシュタイン流のドイツ語によるコミッシェ・スタイルのものであり、初めから微妙に描かれており、仲の良い恋人たちの組み合わせが変わったのは、第一幕の毒薬による介抱劇が行われた際に入れ替わっていた。そしてその組み合わせが最後までどうなるか気を持たせる細かな演出がなされ、最終的には、リブレット通りの元の鞘に納まる伝統的な演出となっていたが、発売当時は斬新な面白い「コシ」と受け取られていた。

 6人の歌手陣は東ドイツで活躍する方々なので、このホームページでは初めてであるが、歌も演技も優れており、ドイツ語劇であることを忘れさせるライブと異なった完璧な演技がなされていた。また、第10番の小三重唱など随処で鳴るチェンバロの響きが効果的であったり、第25番のロンドなどで鳴るホルンの響きなどが素晴らしかったり、細かなところへの配慮がなされていた。さらに、大舞台のライブのように大雑把でなく、男二人の思いと異なる姉妹の相手の選び方が各所で現れて、その都度男達を驚かす心理的な見せ場も用意され、これはスタジオの映像でなければ不可能であろうと思わせた。室内劇に徹し、アンサンブルを重視したこの「コシ」は、このオペラのあり方の一つを思わせる優れたものと考えられる。

(以上)(2011/03/18)


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