(最新購入のDVD;ケネス・ブラナーによるオペラ「魔笛」の完全映画化、)
11-11-2、映画監督ケネス・ブラナー、ジェームス・コンロン指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団によるオペラ「魔笛」の完全映画化、2006年、イギリス映画、日本公開日07年7月14日、

−この映像を見終わって、映画は凄いことが出来るものだと驚いたし、戦争を嫌い平和を求めるストーリイに描かれたことに感動もしたが、劇の進行とともに一貫して流れる音楽の美しさが、これを支えていたことに改めて気がついた。「魔笛」の読み替えオペラの映画作品としては初めてのものであろうが、音楽の素晴らしさが良く出ており、原作を余り歪めずに、戦争を嫌う平和への願いが込められた感動的な作品に仕上げられていた。−

(最新購入のDVD;ケネス・ブラナーによるオペラ「魔笛」の完全映画化、)
11-11-2、映画監督ケネス・ブラナー、ジェームス・コンロン指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団によるオペラ「魔笛」の完全映画化、2006年、イギリス映画、日本公開日07年7月14日、
(配役)タミーノ;ジョゼフ・カイザー、パミーナ;エイミー・カーソン、パパゲーノ;ベンジャミンJ.デイヴィス、パパゲーナ;シルヴィア・モイ、夜の女王;リューホフ・ペトロヴァ、ザラストロ;ルネ・パーペほか、
(2011年8月20日、銀座ヤマハ店にて購入、全国劇場公開作品、Showgate-PCBE-52728)

        第二曲目は、最新購入のDVDとして、前曲と同様にヤマハで見つけた、オペラ「魔笛」の映画版を紹介したい。2006年に制作されたイギリス映画(当然言葉は英語)であり、日本公開日は2007年7月とされていたが、私は、モーツアルトイヤーには、いろいろとアンテナを張っていたつもりであるが、残念ながら、その存在を知らなかった。コンロンが指揮をし、ザラストロをルネ・パーペが歌っていたので、それ以外の出演者は知らなかったが本物と確信し購入したが、なかなか感動的なファンタジックな愛の物語であったので、オペラを見た積もりでここにご紹介することにした。オペラの映像を見たままに、そのストーリイの内容までこれまで紹介してきたが、映画でも同じようにすると、映画の種明かしをしてしまうようで、いかがなものか考えたが、ここではリブレットと如何に違うかが重要であると考え、見たままに紹介をしていきたいと思う。

   このオペラ利画をアップしてから、10日ほど経って、モーツァルテイアン・フェラインのフォルツーナさんからメールを頂いた。彼女は何とあのモーツァルトイヤー時に、 この映画を見て、感想文を彼女のHPに”戦争映画「魔笛」”と題して掲載していたという。彼女の美的感覚とオペラを見る確かさは、かねて敬服しているので、ここに掲載するので、ご覧頂きたいと思う。実は、私もメールを頂いて初めて見たのであるが、大筋ではかなり合っていたので、私は一安心している。



     真っ青な青空の下で序曲の三和音がゆっくりと始まり、画面一杯に広い野原が開けていたが、それは果てしない戦場であった。塹壕には青色の軍服の兵士たちの姿があり、アレグロになって、兵士たちがその中で忙しく駆けずり回っていた。大砲の姿から時代は第一次大戦中か、ヴァイオリンを弾く音楽隊が行進し、空中では戦闘機が飛び回り、歩兵たちが鉄砲や拳銃を持って一斉に突撃を開始すると、敵からの砲弾が炸裂して死傷者が出ており、場面は肉弾戦の悲惨な状況で序曲が終わっていた。



         そして最初の曲の序奏が始まり、場所は塹壕の中となって、敵の手榴弾が塹壕に投げ込まれて大爆発すると、数人の兵士たちが外へ放り出され、泥沼のような池の中で一人の兵士が助けてくれと大声で叫んでいた。白い煙の蛇のようなものが兵士に向かっており、兵士が倒れてしまうと、どこからか三人の白衣の従軍看護婦たちが「死の天使よ、地獄に戻れ」と歌いながら登場して兵士を助け、気絶した兵士を介抱していた。そして兵士の気品ある姿に見とれて女三人が女性らしい口げんかの美しい三重唱となっていた。



          三人が夜の女王に報告に立ち去ると、場面は再び塹壕の中。どうして助かったのだろうと兵士タミーノが不思議に思っていると、軽快な音楽が流れてきて鳥を捕まえる不思議な兵士が登場しパンを吹きながら歌っていた。その様子を見ていたタミーノがその兵士に声を掛けると飛び上がって驚くが、夜の女王のために鳥を捕まえるパパゲーノであることが分かった。パパゲーノがタミーノを助けたと嘘をつくと、怒った三人の軍服姿の女兵士たちが現れてパパゲーノの口を封じて私たちが助けたと語り、女王様から伝言があるといいながら「これを見て」と手鏡をタミーノに手渡して立ち去った。


          タミーノはその絵姿の女性の美しさに驚いてアリアを歌い始め、画面は白黒のダンスパーテイで二人が踊っている平和な姿が写し出され、最後には「これが恋なのだろうか」と歌っていた。そこへ再び三人の女兵士が登場し、女王の娘パミーナがザラストロに浚われたと告げると、雷鳴とともに大きな戦車に乗った夜の女王が前奏の音楽を響かせて登場し、兵士タミーノに近づき、「娘を助け出してくれ」とレチタテイーヴォで語りかけ、「助けたら娘は永遠にあなたのもの」とコロラチューラの技巧を駆使したアリアを歌ってタミーノを驚かせ、再び戦車で立ち去っていった。


        ム、ム、ムと口をきけないパパゲーノが助けてくれと歌っていると、タミーノが手を貸しても口かせは外れない。そこへ三人の女兵士たちが現れて口かせを外し、「嘘つきや人を騙す連中に口かせをすると、人々は平和になり憎しみや戦争は消える」と歌って賑やかな五重唱となっていた。そして女王様からとして、タミーノには「魔法の笛」が、パパゲーノには「チャイム」が贈られて、二人はパミーナを助けにザラストロの国に行くことになり、空から現れた三人の童子たちが案内することになった。そして二人は、まだ銃火が鳴り止まぬ戦場を駆け抜け、ザラストロの宮殿へと向かっていった。


        しかし、画面はそのまま空から宮殿に近づき窓から中へ飛び込むと、手鏡のパミーナが衛兵のモノスタトスに襲われて、気を失ってしまっていた。その部屋に何とパパゲーノが忍び込んできて、いきなりモノスタトスと鉢合わせ。お互いに「悪魔だ!」と歌いながら逃げ出して、パパゲーノは気がついた必死のパミーナにナイフを突きつけられた。
         パパゲーノが直ぐに女王様の使いだと言って安心させ、タミーノの話をすると、パミーナは「写真を見ただけで好きになるなんて馬鹿みたい」と嬉しそうだった。パパゲーノが「僕もそういう経験が5年前にある」と話しているうちに、パミーナが「恋をする男なら優しい心を持っている」と歌い出しパパゲーノもこれに答えて素晴らしい二重唱になっていた。二人は恋の楽しさ、嬉しさ、妻となり夫となる幸せを重唱して宮殿の奥へと逃げ出していた。


        ザラストロの宮殿は広く複雑で、三人の童子たちは兵士タミーノを案内しながら、思慮深さ・勇気・忍耐の三つを守り、男らしさを持てば救われると教えていた。入り口は迷路のようで最初の入り口は「下がれ!」と退けられ、反対の入り口も駄目で、中央の入り口から忍び込むと、中は広い工場のようで大勢の人々が働いていた。パミーナを救おうと決意を固めたところに「この神聖な館に何をしに来た」と問われて、管理者と禅問答。「ザラストロに浚われたパミーナを救うために来た」と答えると、「お前は母親に騙されている」と言われ「時が来れば分かる」と突き返された。


        呆然とするタミーノ。しかし、周りの働いている人たちが「まもなくだ」と教え、また「パミーナは生きているか」と問うと、「無事でいる」と励ましてくれた。タミーノはその答えに感動し、感謝の気持ちで笛を吹くと、何と笛の音を聞いて無表情な大勢の人たちの表情が急に明るさを増し、踊り出すように元気になってきた。喜んだタミーノがパミーナと叫びながらもっと吹くと、パパゲーノのパンの笛も聞こえてきた。それを見ていた管理者ザラストロは、「この若者たちは使える」と判断したか、部下に何やら合図をしていた。



            画面が突然変わって、宮殿の屋上に逃げ込んだパパゲーノとパミーナが、タミーノを探そうと急いで降りようとすると、赤い軍服のモノスタトス一行に捕まりそうになり、逃げ場を失った。そこでパパゲーノは思いついて「チャイム」を鳴らしてみると、衛兵たちは何と一斉に踊り始めたので大喜び。「助かった」と二人は喜んで「このチャイムがあれば、世の中が平和になる」と歌っていると、突然、トランペットが鳴り響き「ザラストロ万歳!」の行進曲と合唱が始まった。ザラストロが登場し大勢の人たちが集まっていると、そこへパミーナとパパゲーノが紛れ込んでしまい、パミーナはザラストロに向かって堂々と正直に逃げ出した理由を述べて許しを請うていた。



        ザラストロは「君の瞳には愛が輝いて見える」とパミーナを受け入れ「まだ自由の身には出来ない」と語り「母は許せないが、君のいるべき場所はあの勇敢な若者の傍だ」と皆の前で語っていた。パミーナとタミーノはここで初めて出逢って、思わず皆の前で抱き合ってしまっていた。ザラストロは二人を追い回していたモノスタトスを伍長に格下げし刑を与えて、皆から賞賛されていたが、終わりに「試練の時が来た」と言い、二人に「求めるものは太陽の彼方にある」と語り、大合唱が再び始まって、タミーノとパパゲーノは目隠しをされて衛兵たちに連行されて最初のフィナーレが終了していた。


         二人の衛兵がタミーノとパパゲーナの目隠しを取り、試練を受けるかとタミーノに質していた。「報酬は平和だ」と言われ考えた末に、タミーノは「愛のために」と約束していた。ザラストロはタミーノが死を覚悟して試練を受けると聞き、「成功させねばならぬ」と語っていた。ゆっくりとした厳かな行進曲が始まり、大勢の人々が戦死者を祭る広大な墓地に、三三五五、集合していた。三つの和音が響きザラストロが「我らの父たちよ」と歌い出し「二人が求めるものを与えたまえ」と祈るように朗々と歌っていた。人々も合唱で「戦いが終わり平和が訪れるように」と歌っていた。



  パパゲーノは二人の衛兵に「試練を受けるなら、5年前に分かれたパパゲーナに会えるぞ」と言われてその気になり、タミーノもパミーナに会えるぞと言われたが、「だが沈黙を守ること。女に惑わされるな」と二人の衛兵は歌いながら忠告していた。衛兵たちが立ち去ると、試練が始まり、早速、三人の女兵士たちが駆けつけて「女王様が呼んでいる」と誘い出すが、二人は 「口をきくと死だ」と脅されていたので、何とか持ちこたえていたが、五重唱が賑やかであった



         一方、モノスタトスが望遠鏡で外を見張っているとパミーナを風車の小屋で発見し、早い口調でパミーナを抱きたいと歌っていた。そこへ大音響とともに夜の女王が登場し、パミーナと再会した。女王は「あの若い者はどこ」とパミーナに質し、「彼はザラストロの仲間になった。ザラストロはいい人よ」と答えたパミーナに、カンカンになって怒り、「これでザラストロを殺すのよ」と激しく歌いながらナイフを手渡して、「私を否定した彼を殺さなければ娘でない」とヒステリックに歌っていた。



     パミーナはもの凄い見幕で母に突き放されて悄然となっていたところへモノスタトスが忍び寄り、俺が助けてやろうと口説こうとしたところにザラストロが現れた。ザラストロは誰も信じられなくなったパミーナを慰めるように工場に連れて行き、何をしているかを良く見せて「ここで働くものは復讐する心を持たない」と歌い出し、赤十字のついた広い野戦病院の大勢の負傷者を見舞って、パミーナを安心させていた。



  場面が変わってタミーノとパパゲーノが宮殿の中でビールが飲みたいなどと休んでいると、婆さんがビールを持って現れパパゲーノがからかうと年は18歳と2分だというが、パパゲーノが沈黙したので立ち去った。そこへ三人の童子たちが「ザラストロの国へようこそ」と歌いながら、笛とチャイムを二人に手渡し、ご馳走を置いていった。パパゲーナが、早速、ワインにありつき、タミーノが笛を吹き出すと、遠くから聞きつけてパミーナが近づいてきた。タミーノは顔色を変え、口をきかぬように無視したため、パミーノは泣き出しそうな顔をして絶望的に「死んだ方が増し」と美しいアリアを悲しげに歌っていた。



 タミーノが呆然としていると厳かな合唱が聞こえてきて、勇気ある兵士の出発の時が来たと歌っていた。タミーノは赤い軍服を着せられ、二人の衛兵に連れられて出発しようとしていた。そこへ再びパミーナが顔を出し、心配だから行くなと歌い、タミーノは命令で行かなければならないと別れを告げ、ザラストロは出発の時が来たと「別れの三重唱」になって、大勢の兵士たちと一緒にタミーノは出征して行った。



  婆さんに口をきいたパパゲーノは二人の衛兵に連れられて、手すりのある牢屋のような部屋に入れられて罰を受けろと言われていた。そして独りぽっちの寂しさを「恋人か女房が欲しい」と歌っていると、何と着飾った女たちが大勢現れて「まるで夢のよう」と歌っていたが、それがまさに本当の夢の中の出来事。目が覚めて見ると婆さんに抱きついており、寂しさに耐えかねて婆さんに「愛する」と誓ったので、喜んだ婆さんは若いパパゲーナに大変身。それからはパパゲーノは彼女を求めてさまよい歩いていた。



  場面が変わって三人の童子たちが降りしきる雨の中を「夜が明け太陽の世界が始まった」と元気よく歌っていると、パミーナが雨の中をずぶ濡れで歩いており様子がおかしい。手にはナイフを持ち三人が近づくと「死なせて」といって倒れ込んでしまった。三人はタミーノに会わせてあげると激励すると、少年たちを信じたパミーナが元気を取り戻し、四重唱になって、終わりには雨の中を走り出していた。



  再び場面が変わり、雷雨の嵐の中で目玉だけが光る黒のマスクの合唱団たちが厳かにコラールを歌い出し、「平和に立ち向かうものは、火、水、大気、大地により浄められ、死の恐怖を克服したとき、望みがかなえられる」と歌っていた。そこへタミーノがこの戦場に到着し、二人の衛兵と「行こう」と相談しているときに、パミーナの声が聞こえ、彼女は馬で駆けつけて来た。口をきくことが許され二人で試練に挑戦することも許されて、二人は「私のタミーノ!」と言い合って雨の中で劇的な再会をした。





   ピッチカートの伴奏が聞こえて二人は、パミーナが先導し、タミーノが笛を吹いて進むことを確認して、二人は砲弾の飛び散る炎の戦場の中を、笛の音とともに歩き始めたが、青い制服の夜の女王軍は手出しが出来ず、二人は試練に成功し、赤い軍服のザラストロ軍の勝利となった。二人は続いて、水をせき止めた堰がモノスタトスの手で切られて、塹壕の中で濁流に流されたが、最後に何とか捉まって九死に一生を得た。それを見ていたザラストロを始め見方の兵士や見守る大勢の人々たちは大喜びして「勝った」と二人を歓迎して、二人の衛兵に肩車に乗せられ、宮殿の中へと凱旋して行った。



  一方のパパゲーノは、パパゲーナを探したがどうしても見つからず、納屋のわら小屋に草臥れて座り込んでしまった。ふと見ると首吊り縄があり、諦めて死んでしまおうと、1/2/3まで数えていると三人の童子が現れてチャイムを鳴らせという。忘れていたとばかりにパパゲーノがチャイムを鳴らすと、納屋の外からパパゲーナが近づいてきて、パ・パ・パの喜びの二重唱が始まり、音楽の素晴らしさを見せつけるこの「魔笛」の決定的場面を見せていた。場面が変わって軽やかな音楽とともにモノスタトスに導かれて、夜の女王の一行が宮殿に忍び込もうとしていたが、何とそれは宮殿の壁をよじ登る乱暴なもの。しかし雷鳴とともにザラストロたちに簡単に見つかってしまい、全員が壁から墜落してしまっていた。



   ザラストロはそれを見て、宮殿の屋上から「太陽の力は夜を追い払い、不正な力を討ち滅ぼした」と堂々たる勝利宣言を行い、広場に集まっていた大勢の人々による喜びの大合唱が始まっていた。「清らかなる光が私たちを苦しみから解放してくれる」と平和への喜びを全員で合唱していた。そして終曲になって、「知恵の力は戦争よりも強い」と繰り返し歌い「全ての人間は平和を切望する」と繰り返し歌って、全員集合の大団円となって、「魔法の笛」を讃える物語は終了した。



   この映像を見終わって、映画は凄いことが出来るものだと驚いたし、戦争を嫌い平和を求めるストーリイに描かれたことに感動をした。非常に手間のかかることを良くやったものだと感心もしたが、劇の進行とともに一貫して流れる音楽の美しさが、これを支えていることに改めて気がついた。
          最初に見終わったときは、良く分からないところが沢山あったが、舞台を見る以上に凄い迫力を感じており、映画というものは大体が1回見て、それで終わりであろうから、感動が与えられれば何をやっても良いと言うことになるのであろう。従って、細かな問題の詮索などは不要なのであろうが、今回、この報告を残すため何回も繰り返して見たので、疑問に思ったことなどをメモしておこうと思う。



  最初に見て疑問に思ったことは、戦車に一人乗って登場してきた夜の女王が、ザラストロ軍の敵であることは分かったが、どういう人か分かず仕舞いであった。しかし、そのような疑問を持ってよく見ると、女性軍の大将であるばかりか、初めの青い軍服の軍の総大将であったことが、炎の試練の場で気がついた。第二にザラストロの工場が何をするところか、良く分からなかったが、弁士とザラストロを同一人物に描いた発想にも原因があったが、宮殿を含めた工場全体が赤い軍服のザラストロ軍の大きな駐屯基地で、ザラストロは負傷者を助け野戦病院やお墓まである軍事基地の総大将であった。なぜタミーノが死を厭わぬ試練を決意したかが当初はよく見えなかったが、平和のため愛のためであることが次第に分かり、両軍の見守る火炎の戦場の中で、笛の音に導かれた炎の試練の場は圧巻であり、続く水流の試練の場を含めて、映画でなければ絶対に表現できない迫力ある山場を描いていた。

           パパゲーノがなぜ鉄格子のある牢屋に入れられたかが良く分からなかったが、婆さんと口をきいたための罰と説明があり、リブレットにはない罰として納得したが、パパゲーノの鳥刺し業が、戦場では余りにも異質であり過ぎた。また、兵士タミーノが泥沼の中で白い蛇のような煙に怯えていたが、これも分からず仕舞いであった。三人の童子が何者なのかやどうして空中を飛ぶかなども、これらと同様に、「魔笛」固有の問題で、映画を責めてもしょうがない問題なのであろう。

  このDVDを最初に見たときは映画館並みのサラウンド音質を味わうためヘッドフォンの大音量で聞いていたが、爆発音とか雷鳴などの音響に負けずに響く音楽の美しさは最高であり、さすがコンロンによる演奏であると讃えておきたい。この映画では俳優ではなくオペラ歌手を起用しているのが当たっており、音楽面でも演技面でもこの成果が現れていた。この音楽を聴きながらオヤと思ったことを幾つか上げておくと、夜の女王のアリアが二つとも劇的であり、コロラチューラの声も空を飛ぶ映画ならではの圧倒的な画面が出来上がっていた。工場内の弁者とザラストロが声域が同じで同一人物として描かれていたが、リブレット違反ではあるが結果的に問題はなかった。しかし、演じたルネ・パーペは最も安心して見て居れたが、メイキングを見ると英語の発声で大変な苦労があったようだ。第一幕フィナーレの目に見えぬ人々の合唱がタミーノの周りの人々であり、「パミーナは無事である」の声も自然であり、また笛の音に生き生きと反応する様子は非常に感動的であった。第二幕が行進曲で始まらないのは異質でリブレット違反のように思えたが、幕の休みもない映画なのでこだわらない。問題は第二幕フィナーレの岩山の場面で、二人の衛兵の二重唱のコラールが岩山を形作る黒いマスクの人々の合唱に全て置き変わっていたが、これは前後の流れから見て、やむを得ないものと思われた。

            映画を見終わって、気になったことを述べてきたが、「魔笛」の読み替えオペラの映画作品としては初めてのものであり、音楽の美しさが良く出ており、戦争を嫌う平和への願いが込められた感動的な作品に仕上げられていた。2006年の没後250年を記念して作成されており、時代は変わっても、原作を歪めない立派な作品であると誉めておきたい。DVDにはメーキングが付属しており、監督ケネス・ブラナーの談話や撮影時の苦労話などが興味深く描かれていた。この監督はシエイクスピアー劇を映画に蘇えさせた名人のようであるが、オペラは初めてのようであり、斬新なストーリー・テリングと驚異のビジュアル・マジックに定評のある方で、さすがという映画に仕上がっていた。

(以上)(2011/11/14)


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