(懐かしいS-VHSを見る;コープマン交響曲連続演奏会、第一集、6曲)
11-10-4、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、連続演奏会第一回、1991年5月19日、東京芸術劇場、日本公演、NHK。
(曲目)交響曲ハ長調(第16番)K.128、変ホ長調(第1番)K.16、ニ長調(第4番)K.19、ハ長調(第22番)K.162、ト長調(第10番)K.74、ニ長調(第30番)K.202(186b)、

−コープマンの初期シンフォニーのピリオド演奏は、トランペットやテインパニーが含まれると、弦楽器の人数が少ないので相対的に強調されるせいか、違和感を覚えることがあるが、テンポは颯爽としており、透明感溢れる古楽器が持ち味を発揮していることを各所で感じさせてきた。ホグウッドの交響曲全集でも感じたことであるが、初期のシンフォニーは小編成のピリオド楽器や奏法に、恐らく非常に向いているものと思われる−

(懐かしいS-VHSを見る;コープマン交響曲連続演奏会、第一集、5曲)
11-10-4、トン・コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ、連続演奏会第一回、1991年5月19日、東京芸術劇場、日本公演、NHK、
(曲目)交響曲ハ長調(第16番)K.128、変ホ長調(第1番)K.16、ニ長調(第4番)K.19、ハ長調(第22番)K.162、ト長調(第10番)K.74、ニ長調(第30番)K.202(186b)、

(1993年02月14日、NHKによる放送をS-VHSテープに3倍速で収録)


このトン・コープマン指揮のアムステルダム・バロック・オーケストラによるモーツァルト交響曲連続演奏会の第一集全6曲は、1991年5月19日東京芸術劇場で、NHKによりアナログ・ハイビジョン収録された。この団体は、モーツァルト時代の楽器と編成で18世紀の音色と様式を再現している。その意味でコープマンによる全曲演奏は、国際的にも注目され、高く評価されている。今回の第一集には、標記の6曲がこの順番に演奏されており、これらのうち変ホ長調(第1番)K.16(6-7-3)を除く5曲が、このHPでは初出となっている。このコープマンの一連の演奏は、東京芸術劇場ホールで収録されたものであり、彼は指揮台なし指揮棒なしのピリオド奏法の指揮ぶりであった。オーケストラの楽器編成は、ベースが1本の最小限の弦の編成に2本のオーボエとホルンであったが、コープマンは2本のファゴットを常時加えており、およそ20人くらいの標準構成であった。今回の演奏は第一回であるが、他の演奏との区別は、私は第一ヴァイオリンの女性の青いドレスと第二ヴァイオリンの赤いスカートの色で、瞬間的に判断している。

モーツァルトのシンフォニーの連続演奏会第一回の演奏曲目は、標記の6曲であったが、第一曲目として最初に演奏された曲は、シンフォニーハ長調(第16番)K.128であるが、以下、曲別に項目を立てて演奏順に紹介する。


1、シンフォニーハ長調(第16番)K.128、

この曲は、新任の大司教コロレド伯を迎えて間もない1772年5月に書いた3曲のシンフォニーの一曲とされる。メヌエットがない3楽章構成で書かれており、第一・第二楽章はソナタ形式、第三楽章はロンド形式となっている。楽器編成は弦4部のほか、2オーボエ、2ホルンの構成であるが、コープマンは2ファゴットを加えており、第二楽章だけは弦4部の構成となっている。




第一楽章はアレグロ・マエストーソとなっているが、第一主題の冒頭の二つの和音は確かに威厳をもった響きであるが、続く弱奏のスタッカートによる三連符の連続はむしろ軽快な流れになっていた。小柄なコープマンは両腕を振り上げて、全身で指揮をしていたが、古楽器で小編成なせいか弦の響きは爽やかに聞こえ、最初の印象としては素晴らしいものがあった。続く第二主題はオクターブ跳躍が連続した不安定な主題であり、コーダで結ばれていくが、コープマンは提示部の繰り返しを丁寧に行っていた。
展開部は新しい主題による大胆な和声を伴うもので、提示部と再現部とのコントラストが強調されていた。再現部では、ほぼ提示部に沿ってきめ細かく再現されていたが、弦の軽快な躍動が極めて印象的だった。なお、最後の繰り返しは省略されていた。







第二楽章はアンダンテ・グラツィオーソであり、弦楽のみの合奏による文字通り優美な楽章で、短い曲であるが完璧なソナタ形式で書かれていた。淡々とした短い第一主題もスタッカートで始まる第二主題も、第一ヴァイオリンに続いて他の声部は単なる伴奏でなく、対位法の手法で一小節遅れの開始を模倣したりしていた。古楽器による小編成の弦楽合奏はことのほか美しく新鮮に感じた。
フィナーレはアレグロでロンド形式と見なされ、ホルンの伴奏を伴った軽快なロンド主題が颯爽と現れて繰り返されていたが、続く最初の副主題では弦のシンコペーションが壮快に鳴り響き、ロンド主題に続く後半の副主題では力強くホルンが鳴り響き、まさに「狩の音楽」そのものの明るさを際立たせていた。この軽快さは第一楽章の第一主題にも通づるものがあり、シンフォニーの終楽章としての見事な締めくくりとなっていた。
コープマン率いるピリオド楽器による小編成の合奏の新鮮な響きが良く伝わり生きの良い、素晴らしいシンフォニーの始まりであった。


2、シンフォニー変ホ長調(第1番)K.16、

      この曲のこの演奏については、音源は共通のS-VHSであるが他のソースにより既にアップロード済み(6-7-3)であるので、ここでは6-7-3を参照されたい。


3、シンフォニーニ長調(第4番)K.19、

この曲は前項のシンフォニー第一番と同様にロンドンで9歳の頃の1765年に作曲されたと考えられており、第二番・第三番とされていた曲は他人の作とされているので、前作に続く曲とされる。前作と同様に、イタリア風の三楽章構成であり、楽器編成も前作同様に2オーボエ、2ホルンの編成である。全楽章がソナタ形式で書かれていた。





第一楽章はアレグロで、繰り返しのない簡略なソナタ形式で書かれており、第一主題は力強いユニゾンで始まって、弾むリズムが印象的で快く進行し、続く第二主題は短いモチーブのさまざまな楽想の連続で軽やかに進んでいた。突然の転調を伴う短い展開部の後に再現部に入るが、ここでは第一主題は省略されて第二主題が回帰的に自由に形を変えて登場して、一気に駆け抜けるように終結していた。コープマンは、ここでも全身でリズムを取るように動きながら軽快に進めており、小編成のピリオド楽器による合奏がリズミカルで快く、古楽器演奏の特徴が発揮されていた。なお、映像でよく見るとスコアにはないが2ファゴットが合奏に参加していたが、低音補強に止まっているようであった。






           第二楽章はアンダンテで短いが、繰り返しのついた完璧なソナタ形式で書かれており、この楽章ではオーボエが省略されて、ホルンが全体を通じ助奏的に使われて、存在感を示していた。民族風の歌謡的な主題が、終始、第一ヴァイオリンによって代表されて、旋律的に発展していた。
第三楽章はプレストで、ユニゾンで始まるリズミックな主題が華やかに響きを放つ急速な舞曲風の楽章で、前作の第一番のプレストと同様に明るい生気が溢れており、エコーの効果が随所に用いられていた。

前作の第一番ほど親しみやすさや知名度はないが、この曲は同じような楽想で書かれており、コープマンも速いテンポでリズミカルに、小編成のピリオド楽器による古楽器演奏の特徴を生かしつつ、軽快な演奏を行っていた。


4、シンフォニーハ長調(第22番)K.162、

      このシンフォニーは、1773年から74年にかけて書かれた交響曲を集めた全9曲の「自筆譜合本」の最初の曲とされている。作曲の日付は判読困難とされているが、1773年4月19日または29日と考えられており、作曲順では9曲中3番目とされている。成立事情に関する情報は一切ないが、新たにイタリア旅行から帰っての影響があるとされており、三楽章である上に提示部の反復もない簡潔な構成を取り、楽章の性格も典型的なイタリア風序曲(シンフォニア)と見なされている。三楽章ともソナタ形式で書かれており、完全な展開部があるほか、主題法に幾つかの新しさがあるという。この曲の第一楽章と第三楽章には2トランペットが指定されているが、コープマンはそれにテインパニーを加えており、当時はこの二つは一対のものと考えられていたようである。


第一楽章はアレグロ・アッサイであり、第一主題は典型的なファンファーレ音型で明るく開始されるが、これは導入風のモチーブで、後半にはブッフォ風の軽やかなモチーブが現れ、実質的な主題となっていた。続いて、第二主題が軽快に提示され、発展してフェルマータで提示部を終えていた。雰囲気を変える短い展開部を経て、再現部に突入するが、第一主題の後半のブッフォ的な主題が再現され、引き続いて第二主題が提示部とほぼ同様に再現されていた。コープマンはこのイタリア風序曲を一気呵成に元気よく進めており、新たに加わったトランペットとテインパニも祝祭的な輝きや勢いを増して、堂々たるシンフォニーとなっていた。


第二楽章はアンダンテイーノ・グラツイオーソであり、室内楽的にまとまった優雅な楽章である。第一主題は弦楽器で愛らしい主題が現れるが、やがて第二主題はオーボエの重奏で現れ、トリルや三連符などの細やかな装飾的な音使いが工夫され、弦楽器と管楽器の音色の対比も図られていた。
第三楽章はプレスト・アッサイであり、急速な8分の6拍子によるジーグ風のフィナーレであった。第一主題は第一楽章の開始時のファンファーレ風のモチーブであり、これが疾風のような軽快なリズムで輝くように進行する。中間部の展開部が簡潔ながら印象的であり、再び活気と勢いに満ちた第一主題が再現されて、輝かしいフィナーレとなって結ばれていた。
コープマンは、この急緩急の祝祭的なイタリア風序曲を、早い小刻みなテンポで明るく軽快に進めており、オーボエの二重奏も全楽章にわたって活躍し、新たに加わったトランペットとテインパニも祝祭的な輝きや勢いを増し、素晴らしい効果を上げていた。ここでこの日の公演の休憩となり、画面は会場の様子が映されていたが、この編集された映像では直ぐに、続くシンフォニー第10番用の最小編成のオーケストラとなっていた。


5、シンフォニート長調(第10番)K.74、

      この曲は新全集では1770年の春にイタリア旅行中にミラノないしローマで完成されたものとされており、14歳の時の作品である。この曲には自筆譜が存在しているが、残念ながら成立時期もタイトルも記されていないが、第三者の手によって、歌劇「ミトリダーテ」序曲と書かれて消された跡が残されている。この曲は3楽章から成るが、第一・第二楽章が切れ目なく続いており、イタリア風序曲の性格を強く示している。第一楽章はアレグロでソナタ形式、第二楽章はアンダンテで二部形式、第三楽章はロンドでアレグロで書かれており、楽器編成は2オーボエ、2ホルンの編成である。



       第一楽章は、活気に満ちたソナタ・アレグロで、冒頭に現れる第一主題は、単に5度の音域を上下するにすぎない単純なものであるが、コープマンの指揮は颯爽としており、弦と管のエコー風の対話が彩りを添え、続く移行部も細かな装飾的な音型が印象的であった。続いて旋律的な第二主題が短いフレーズを繰り返して安らぎを見せ、後半のシンコペーションの連続も印象的だった。ここで提示部の反復はなくわずか6小節の展開部はオーボエの美しい二重奏でがらりと趣を変えて、再現部に突入していた。ここではほぼ提示部と同様に再現されていたが、第二主題後半の勢いを持続したまま第二楽章に突入していた。ここでがらりと8分の3拍子に早変わりして穏やかなアンダンテになっており、イタリア風オペラ序曲の性格のシンフォニアの形態を取っていた。楽譜で確認すると、休止もなく、二重線による区切りも新しいテンポ表示もないまま連続的に移行していた。



第二楽章のアンダンテは、二つの主題の提示が二度現われる、展開部と提示部の繰り返しのないソナタ形式となっており、急速な第一楽章とはがらりと変わって、ゆったりとした静かな3拍子の楽章。さりげなくオーボエの合図で始まる最初の主題も、第二ヴァイオリンとヴィオラが16分音符で刻んで第一ヴァイオリンを伴奏する温和しい主題も静かに進行し、いつの間にか繰り返されて終結する目立たない楽章であった。

第三楽章は、フランス風コントルダンスの特徴を持つロンドで、軽快なアレグロのロンド主題で始まり、繰り返されて軽快に進行するが、エキゾチックなトルコ風のフレーズを持つエピソードがここで登場する。ザスローは、彼の著書のこの曲の「分析」で、モーツァルトがトルコ音楽に関心を示した最初の例であるとして、譜例をあげて丁寧に解説していた。ロンド主題のシンプルさと短い装飾音型が繰り返されるこのエキゾチックなエピソードは、この楽章を象徴しており、コープマンは淡々として軽快にこのアレグロを結んでいた。
この曲は14歳の時の一連のイタリアでの交響曲の最後の作品と言われているが、活気に満ちたテンポの速いオーケストレーションはコープマンとこのバロック・オーケストラに向いており、軽やかに始まって疾風のように終わるイタリア風序曲にはピッタリのように感じられた。


6、シンフォニーニ長調(第30番)K.202(186b)、

このシンフォニーは、1773年から74年にかけて書かれた交響曲を集めた全9曲の「自筆譜合本」の最後の曲とされている。作曲の日付は74年5月5日と書かれており、作曲順では9曲中8番目とされている。この曲は前後の曲と同様に4楽章制で書かれており、メヌエットを除いて反復記号もついている正規のソナタ形式で書かれている。自筆譜にはトランペットが含まれており、当時の演奏の習慣から、テインパニーも用いられたと考えられている。この曲の特徴のひとつとしては、統一ある共通主題の循環であり、第一楽章の第一主題の下降三和音は、第四楽章プレストの第一主題の骨組みになっており、また第三楽章のメヌエットの主題には、第一楽章の第二主題と深い関連があるとされる。なお、この曲の演奏では、コープマンは、この曲の演奏に2トランペットとテインパニーを加えて演奏していた。



第一楽章はモルト・アレグロで、強奏のファンファーレに似た総奏で第一主題が始まり、実に軽快に3拍子のアレグロが流れ出し、付点とスタッカートによるきびきびしたリズムはコープマンの躍り上がるような仕草もあって実に楽しげに始まった。第一ヴァイオリンと低音弦の掛け合いの経過部を経て、やがて第一ヴァイオリンが第二主題を弱奏で美しく提示し、繰り返しながら軽快に進行するが、後半には展開部の主題となる第三の主題も現れていた。再び冒頭主題から快調に反復されて、展開部に突入するが、第三の主題が弦と管が掛け合いながら力強く進行して趣を変えてから、再現部に入って冒頭主題が軽快に流れ出した。再現部では続いて型通りに第二主題も現れて、少し形を変えたり、拡張された形を取って、結びは展開部の音形で静かに終了していた。         第二楽章はアンダンテイーノ・コン・モートとされ弦楽器の合奏による短くまとまったセレナーデ風の楽章。第一ヴァイオリンからカノン風に第二ヴァイオリン、ヴィオラへと受け継がれる静かな第一主題から直ぐに第一ヴァイオリンが小刻みに刻む第二主題に入り、静かに反復されていた。展開部の形を取る8小節の移行部を経て、再び全体が再現されていたが、コープマンは反復記号を省略して、直ちに短いコーダで結んでいた。軽快で華やかな第一楽章と対照的な落ち着いた静かな第二楽章であった。



       第三楽章はメヌエット。トランペットやテインパニーで力強くフル編成の堂々たるメヌエットとなっており、エコー風の処理がなされて工夫がなされていた。第一楽章の第二主題と関連があるとされていたが、聴感上は気がつかなかった。トリオは対照的に弦楽器だけの静かな穏やかなもので、ダ・カーポされて、再び、堂々たるメヌエットが再現されていた。
第四楽章はプレストであり、小気味よい行進曲風のフィナーレとなっていた。この楽章の第一主題では、第一楽章の第一主題の最も重要な付点リズムの動機がそのまま使われており、単なる関連と言うよりも循環主題とも考えられている。繰り返されてから経過部を経て第一、第二ヴァイオリンに第二主題が弱奏で現れて軽快に進行して提示部を終えて軽やかに反復されていた。展開部は第一主題から取られた付点音符の主題であり、ここでも循環が図られてから再現部が型通り行われていた。この末尾にも繰り返し記号がつけられていたが、コープマンはこれを省略し、コーダを経て弱奏で静かにこの楽章を終えていた。

      初期のシンフォニーから聴いてきたが、さすがこの第30番にもなると4楽章制が定着して堂々たる交響曲の姿に変貌してきたが、さらにハイドンの四重奏からヒントを得たとされる循環主題なるものまでが登場して、モーツァルトの交響曲作りも次第に本格的になってきたと実感させられた。
      コープマンの初期シンフォニーのピリオド演奏は、トランペットやテインパニーが含まれると、弦楽器の人数が少ないので相対的に強調されるせいか、違和感を覚えることがあるが、テンポは颯爽としており、透明感溢れる古楽器が持ち味を発揮していることを各所で感じさせてきた。ホグウッドの交響曲全集でも感じたことであるが、初期のシンフォニーは小編成のピリオド楽器や奏法に、恐らく非常に向いているものと思われる。

(以上)(2011/10/08)


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