(懐かしいLDより;ガーデイナー指揮による古楽器の「魔笛」K.620、)
11-1-3、ガーデイナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイストによる古楽器の「魔笛」K.620、モンテヴェルデイ合唱団、1995年6月、アムステルダム、コンセルトヘボウ、

−この映像は、ガーデイナーのオリジナル楽器による早めのテンポのオーケストラ演奏を生かした、アンサンブルが格段に良い音楽的な「魔笛」であり、極めて異色的な映像であった。メルヘン的発想にもフリーメソン的な重々しさにも偏らない、余分なものを取り除いたガーデイナーらしいピリオド風に簡潔にまとめられており、オペラ演奏の一つの方向を示すものと思われる−

(懐かしいLDより;ガーデイナー指揮による古楽器の「魔笛」K.620、)
11-1-3、ガーデイナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイストによる古楽器の「魔笛」K.620、モンテヴェルデイ合唱団、1995年6月、アムステルダム、コンセルトヘボウ、
(配役)ザラストロ;ハーリー・ピーターズ、タミーノ;ミヒャエル・シャーデ、夜の女王;シンデイア・ジーデン、パミーナ;クリステイアーネ・エルツエ、パパゲーノ;ジェラルド・フィンレイ、パパゲーナ;コンスタンツエ・バッケス、その他、
(1997年04月27日購入、ポリグラム株式会社、レーザーデイスク、POLG-1180/1、)

     第三曲目は懐かしいレーザーデイスクの映像からガーデイナー指揮の「魔笛」である。これから半年ほど、この「魔笛」と「コシ」が交互に続くことが多くなりそうであるが、12月にガーデイナーの「コシ」を見たばかりなので、比較しやすいように続けることにしている。しかし、この「魔笛」はアムステルダムのコンセルトヘボウのコンサートホールで上演されており、これまでのパリ・シャトレ座のダ・ポンテ・オペラとは一線を画していた。ここでは、コントラバスが3台のいつもより規模の大きい構成を取っているほか、舞台の前のオーケストラを囲むように花道があり、観客はオーケストラ越しに舞台を見上げるスタイルになって広く使われていた。また、6人のバレエ団がライオンや鳥などになって大道具がない舞台に現れ、歌手と一体になって花道まで使って舞台を作り上げており、このホールに合わせたように作られたこの「魔笛」は、オペラ劇場とは異なったホールオペラ構成となっていた。従って、ガーデイナーが好むこれまでの舞台と異なった新鮮な音の響きやアンサンブルの変化が楽しめそうな予感と期待が寄せられていた。



   映像では皇室の一族が貴賓席に入場する所から映像が始まり、貴賓席やオーケストラを写し出し、出演者などの字幕が写されてから、ガーデイナーが階段を下りて拍手とともに指揮者席に着いていた。始めの三つの和音が盛大に鳴り響き序曲の序奏部がゆっくりと開始された。やがて早いアレグロで弦が響きだし主部が軽快に始まった。明らかに古楽器の響きであり、ガーデイナーは早めのテンポでテインパニーやトランペットを良く鳴らして進行していた。良く見るとコントラバスが3台で、フルートもオーボエも良く鳴り、折れ曲がったバセットホルンも写されて、コンサートと同じように序曲が終了していた。



   オーケストラの序奏とともにタミーノが叫びながら逃げ出してきて、4人のダンサーがライオンの姿で追いかけてきて、タミーノは立ったまま気を失ってしまうが、そこへ三人の従女が合唱しながら登場し、ダンサーたちを捕まえて追い払ってしまった。そしてタミーノを前に女らしい口喧嘩の美しい三重唱。良く見るとタミーノは、若きミヒャエル・シャーデで、三人は名残惜しそうに立ち去った。タミーノが気が付くと、口笛とともにパパゲーノが登場し、「おいらは鳥刺し」と歌っていた。ダンサーたちの演ずる鳥を追いかけながら歌い終わると、二人は気が付いてオーケストラの前の花道で話し合い。パパゲーノがライオンなんて素手で十分と自慢したところで、三人の従女が現れて、パパゲーノを懲らしめ、タミーノには額縁を渡していた。タミーノは額縁を見ながら花道で「何て美しい姿」と明るく歌い出したが、客席の真ん前の花道の中央なので歌いずらそうに見えていたが、お客さんは大喜びで大拍手であった。




   タミーノはパミーナが掠われたことを聞き助けようと決心したとき、夜の女王がダンサーの肩車にのって階段から登場し、アリアを歌い出した。肩車に乗ってハイエンドの声を出すのは大変そうに見えたが、後半では勝ったら娘を上げると堂々と歌って夜の女王らしさを見せていた。その後「ムムム、」の五重唱が始まり、三人の従女から女王様からの贈り物として、タミーノには魔法の笛を、パパゲーノには銀の鈴が贈られて、舞台に隠れていた三人の少年の案内で、二人はパミーナを助ける旅に出発した。




   パミーナがモノスタトスとダンサーたちに虐められているところに、パパゲーノが、突然、顔を出し、モノスタトスと鉢合わせ。パパゲーノがパミーナを助けて、額縁でパミーナを調べているうちに二人は仲良くなり、パミーナが「愛を感じられる男なら」と歌い出し、パパゲーノとの素晴らしい愛の二重唱になって大拍手となっていた。




   フィナーレに入って、三人の少年たちに案内されて花道に現れたタミーノは、不屈の精神と忍耐が必要で男らしくせよと教わった。そして客席に降りて独り言でレチタテイーボを歌いながら、花道に上がろうとすると「下がれ」とダンサーたちに二度脅され、三度目にやっとダンサーたちが作る宮殿の門から僧侶が出て来て、花道で問答開始。タミーノは僧からザラストロは善人であり、お前は女に騙されていると告げられて当惑していた。



   しかし、無言の声に「パミーナは生きている」と励まされ、元気を出して感謝の笛を吹くと、花道ではダンサーの動物たちが踊り出し、そのうちにパパゲーノの口笛が答えてきた。これは近いと進み出すと、パミーナとパパゲーノが現れて、口笛を吹いてるうちにモノスタトス一行に捕まってしまう。しかし、少年たちが運んできた銀の鈴をパパゲーノが叩き出すと、一行は踊り出してしまい、二人は助かり銀の鈴の効果に驚いていた。


   そこへ遠くから「ザラストロ万歳!」の合唱が聞こえてきて、二人は大勢の人々に取り囲まれ、ザラストロがダンサーのライオンに牽かれて登場してきた。パミーナは恐れずに、勇気を出して告白したが、ザラストロは全てを理解しており、お前には男性が必要だと諭されていた。そこへタミーノがモノスタトスに連れられて登場し、二人の初めての出会いとなっていた。全てを心得ているザラストロは、命じてタミーノとパパゲーノを試練の場へと案内させ、足の裏の鞭打ち刑で逆さ吊りにされたモノスタトスを許してやったところで、第一幕は終了となっていた。


   第二幕はガーデイナーが大拍手で迎えられ、舞台では僧侶たちが集まっており、オーケストラによる荘厳な行進曲で始まっていた。三つの和音が鳴り響き、ザラストロが今日は重要な集まりだとし、タミーノを助けるのが我々の努めだと説明して皆の賛同を求めた。続いて三つの和音の後、タミーノとパミーナを一緒にさせたいと発言し、イシスとオシリスの神に二人に叡智の心をと祈るように朗々と歌い、続いて荘厳な合唱が始まっていた。



タミーノとパパゲーノが連れてこられ、暗闇の中で大音響に脅されながら試練に向かう。パパゲーノは僧侶たちにお前に似たパパゲーナに会わせてやると言われ、渋々承諾していた。二人の僧侶から女と口を聞くなと諭され、二人は「女の企みに気をつけろ」と合唱していた。早速、三人の従女が駆けつけて、女王様が呼んでいると誘うが、タミーノとパパゲーノの二人は五重唱でやり合いながら、女の誘いを上手くかわしていた。 


        モノスタトスが、突然、美しい娘がいたとダンサーの背中で眠っているパミーナを見つけて「惚れれば楽しいさ」と俺だって黒いが人間さと歌っていたが、そこへ「お下がり!」と、夜の女王が客席から登場し、モノスタトスを追い払った。パミーナは驚いて母と対峙するが、夜の女王は「ザラストロを殺せ」と娘にナイフを手渡し、自分は復讐のアリアを激しく歌っていた。実行しなければ親子の絆も砕かれると花道で歌う女王の姿と歌は、オーケストラをバックに客席の真ん前で歌われて迫力十分であった。「出来ないわ!」というパミーナのナイフを取り上げてモノスタトスが彼女を脅そうとすると、そこに、突然、ザラストロが現れて、モノスタトスを追い払った。そして「この聖なる神殿には復讐は存在しない」と歌い出し、母を心配するパミーナを慰めていた。



   タミーノとパパゲーノが再び連れてこられ、暗闇で顔を隠した婆さんがパパゲーノに少しづつ近づいてきた。水が飲みたいと言うと水が差し出されて二人の会話が弾み、彼女は18歳と2分であり、彼女の彼氏はパパゲーノであると言う。驚いて、彼女の名はと聞こうとすると、激しい雷鳴が起こり、彼女の姿は消え去ってしまっていた。
   そこへ三人の少年が「ようこそザラストロの国へ」と登場して、食事を用意し、タミーノには笛を、パパゲーノには銀の鈴を持ってきた。タミーノが何気なく笛を吹き出すと、音を聞きつけてパミーナが駆けつけてきた。さあ大変。口をきけぬタミーノは駄目だと合図するばかり。パパゲーノも口にご馳走が入っており悲しい顔をするばかり。死よりも辛いとパミーナは「もう終わりなのね」と悲しげにアリアを歌って立ち去っていった。



   再び三つの和音が鳴り響き、僧侶たちのイシスとオシリスへの祈りの合唱が始まった。良く見ると僧侶の中央に僧衣を纏ったザラストロもおり、良く聞くとどうやら若者は勇敢で心が清いと歌っていた。ザラストロが「王子よ、男らしく冷静だった」と述べ、そこへパミーナを呼び、タミーノの試練のための別れの三重唱が歌われていた。    一方、パパゲーノは稲妻に脅され、下がれと言われて途方に暮れていたが、僧侶が何が欲しいと近づいたので、ワインを所望し、婆さんが差し出したワインをご機嫌で飲んでいるうちに、本当に欲しいものに気が付いた。そして銀の鈴のグロッケンシュピールを見つけて、自分で弾きながら「娘っこが欲しい」と有名なアリアを歌い出した。フィンレイは本当にチェレスタを弾いており、終わりには調子に乗ってガーデイナーとも握手したりして上機嫌となり大拍手。そこにいた婆さんが、私と握手しなければこれから大変なことになると脅すので、婆さんでもいいやと握手した途端に可愛いパパゲーナに大変身。しかし、ここで大音響となって二人は別れ別れになって逃げ去ってしまった。



   フィナーレが始まって三人の少年たちが「間もなく太陽が輝くだろう」と歌っていると、ナイフを手にし様子がおかしいパミーナが現れた。少年たちは様子を見ながらナイフを取り上げ、タミーノに合わせてあげると誘い出し、やがて明るい四重唱になって退場していた。



 一方、舞台では厳かな前奏が始まって二人の衛兵たちが階段の前で厳かにコラールを歌っていた。タミーノが到着し、その教えに従って進もうとしたところに、パミーナが駆けつけてきた。話をすることが許され二人で試練を受けることが許されて、二人の劇的な再会の後、パミーナが先導しタミーノが笛を吹いてとなった。ピッチカートの伴奏が始まって、二人は手を取り合って恐怖の扉を開けて試練の道へと出発し、まずダンサーたちが邪魔をする間をくぐり抜けながら炎の試練に成功した。続いて別のダンサーたちが邪魔をするのを遮って水の試練を受け、無事成功した。二人の衛兵に勝利を祝福され、壮大な合唱で成功を讃えられて、二人は階段を駆け抜けて神殿に到着した。



   一方のパパゲーノは、どこを探しても逃げたパパゲーナが見つからない。口笛を鳴らしながら探しても見当たらず、いよいよ諦めて首を吊ろうと決心した。舞台ではダンサーたちが首吊り用の木に化けており、パパゲーノが1、2、3、と声を掛けても全く反応がなく諦めかけたときに、隠れて様子を見ていた少年たちが「銀の鈴がここにあるよ」と声を掛けた。忘れていたとパパゲーノがグロッケンシュピールを叩いて歌い出すと、隠れていたパパゲーナが姿を表した。美しい明るい音楽の伴奏とともに、パ、パ、パと涙の感激の再会に、二人は夢中で抱き合ってしまい、そこでは二人の最高の幸せが劇的に歌われていた。

  




  客席の中から夜の女王とモノスタトスの一行が、暗がりの中を静かに靜かにと言いながら花道に恐る恐る登場して宮殿を狙おうとしていたが、折からの突然の大音響とともに闇の世界が崩壊し、一瞬のうちに壊滅してしまった。そして、舞台は明るい太陽の世界になって、大勢の仲間の大合唱とともにザラストロが勝利の宣言をしていた。そしてタミーノもパミーナも僧服に身をまとい僧侶たちと一緒になっており、全員で二人の若者に栄光あれと合唱が続いていた。最後にイシスとオシリスの神への感謝の大合唱が始まり、ザラストロを中心にタミーノやパミーナが手を繋いで一列に並んでいるところに、幸せそうなパパゲーノやパパゲーナも加わっており、盛大な大団円となって終了していた。



   演奏会用のコンサートホールを活用した「魔笛」は、恐らく、この映像が初めてであろう。この舞台には大道具は一切なく、全て6人のダンサーたちがライオン、動物たち、枯れ木に至るまで巧みに抽象化して演じており、額縁とか笛や銀の鈴などの最小限の小道具が用いられているに過ぎなかった。小さな舞台と両側の階段が有効に利用され、オーケストラの前の花道もよく使われて、客席と歌とオーケストラとの一体化に役立っていた。このように工夫されたホールの使い方は私は初めて見るものであり、恐らくアムステルダムの有能なバレエ団(Pirobolus Dance Theater)の独創的なアイデアがあって、可能になったものであろう。

   終了してみると矢張りこの映像は、ガーデイナーのオリジナル楽器による早めのテンポのオーケストラ演奏を生かした、アンサンブルが格段に良い音楽的な「魔笛」であり、メルヘン的発想にもフリーメソン的な重々しさにも偏らない、余分なものを取り除いたガーデイナーらしいピリオド風の簡潔にまとめられた「魔笛」であると解釈できよう。95年の上演当時は新人であった若き歌手陣も、ガーデイナーの期待に応えて、コンサートホールを舞台よりも広く使って、溌剌とした声や動きを披露してくれた。花道で歌うのは、客席の真ん前で歌いずらかったであろうが、観客は目の前で歌う姿を見て大喜びであり、貴重な体験をしたものと思われる。常にホールの中央にいて全体を指揮していたガーデイナー中心の明るい「魔笛」であったと思う。



   この映像は1995年のものであるが、タミーノのミヒャエル・シャーデは、今やウイーン国立歌劇場やザルツブルグ音楽祭では花形のモーツアルト歌手であり、デルモンテ、オッターヴィオ、テイトスなどの全ての役柄をこなしている。また、パパゲーノのフィンレイは、チェレスタを弾いたり口笛を吹いたり器用なところを見せていたが、ロンドンでフィガロを歌ったり、最近ではフィガロの伯爵を歌っており、円熟した存在になっている。パミーナのクリステイアーネ・エルツエは、私が持っているブリリアントのコンサートアリア集で10曲ほどアリアを歌っているほか、最近ではカンブルランの「フィガロ」(9-11-2)で伯爵夫人を歌って貫禄を見せていた。この3人は調べればまだありそうなので、もう少し調べて、このHPの演奏者目録に掲載しようと考えている。

 最後に、ガーデイナーによるガーデイナー一色の「魔笛」であったせいか、映像のカーテンコールではガーデイナーのにこやかな笑顔が見られたので、珍しいと思って記念に撮影を試みた。ガーデイナーがパパゲーノと握手をしたり、オーケストラの皆さんも動き回る歌手たちに小道具を手渡したりして、演技に協力しており、通常のオペラ演奏とは異なる親近感と微笑ましい風景が見出されていた。

(以上)(2011/01/20)


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