(最新収録のソフト報告;ピエール・ロラン・エマールの2台のピアノ協奏曲K.365)
11-1-1、ピエール・ロラン・エマールとタマラ・ステファノビチによる2台のピアノのためのピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365(316a)、およびセレナーデ第3番ニ長調K.185(167a)、ジョナサン・ノット指揮カメラータ・アカデミカ、M週間2008、

−新年に相応しく、久し振りでモーツアルテウムのグロッサー・ザ−ルからの心温まる和やかな映像を見た。ピエール=ロラン・エマールとタマラ・ステファノヴィチの2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365(316a)は、ピアノが珍しく並んで置かれたせいか、二人が互いに顔を見合わせたり、頷いたりして、息の合った演奏をする姿は素晴らしい絵になっており、映像で見る音楽の豊かさ・楽しさを十分に味わせてくれた−

(最新収録のソフト報告;ピエール・ロラン・エマールの2台のピアノ協奏曲K.365)
11-1-1、ピエール・ロラン・エマールとタマラ・ステファノビチによる2台のピアノのためのピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365(316a)、およびセレナーデ第3番ニ長調K.185(167a)、ジョナサン・ノット指揮カメラータ・アカデミカ、M週間2008、
(2010年5月24日、クラシカジャパンの放送よりBD-HDD録画)

   新しい年の最初のソフトはお気に入りのものにしたいと思っていたが、久し振りでモーツアルテウムから心温まる和やかなピアノ協奏曲とアントレッター・セレナードを聴いたので、これを新年の第一号ソフトとした。音源はクラシカジャパンの放送で2008年のモーツアルト週間のグロッサー・ザールからの一コンサート、ジョナサン・ノット指揮のカメラータ・ザルツブルグの演奏で、ピエール=ロラン・エマールとタマラ・ステファノヴィチの2台のピアノのための協奏曲変ホ長調K.365(316a)と、続いてセレナード第三番ニ長調K.185(167a)より二つの楽章をお届けする。時間の関係か、とても軽快な楽しめる演奏なのに、全曲の放送でないのが非常に残念であった。



   2台のピアノは狭いステージで正面を向いて2台が並んでおり、指揮者がピアノの間で指揮をし、ピアニスト二人は観客の方を向いて、互いに隣り合わせで視線を交わしながら、意気のあった演奏をしていた。ピエールはこの曲はお互いのピアノが交互に語り合い歌いかけるが、融合するより互いに模倣し合うのが重要であると言い、タマラはピアノが2台になるとエネルギーも2倍になると明るく語っていた。このようなピアノの配置は初めての映像であったが、師弟の関係なのであろうが、二人が息を合わせて弾くさまが非常に良く捉えられており、とても良いピアノの配置であると思った。続くアントレッター・セレナードは、第二・第七楽章が演奏されていたが、第二楽章アンダンテで、カメラータのコンサート・ミストレスのナタリー・チェーが独奏ヴァイオリンを弾いていた。久し振りで見かけた彼女は、4〜5年前より少し太ってミストレスとして貫禄がついてきたように思った。



   懐かしいモーツアルテウムの建物とグロッサーザールが写されて、映像は指揮者と二人のピアニストが拍手で迎えられて、ソリストたちはにこやかに挨拶をしていた。
   2台のピアノのためのピアノ協奏曲第10番変ホ長調K.365(316a)の第一楽章は、オーケストラで第一主題が威勢良く始まるが、ノットの指揮はとても動きが良く、軽やかに次々と元気の良い軽快な新しい副主題が颯爽と表れて気分がよい。これらは相互に関連しており、全体としてオーケストラの主題提示部を構成しているように見えた。やがて2台のピアノが長いトリルで登場し、第一主題の冒頭を力強く二人で合奏してから、第一ピアノを受け持つエマールが主題後半部を装飾的に軽快に弾きだし、続いて第二ピアノのタマラがこれを模倣するように弾き出した。



それから二人は交互に新しい副主題を元気よく弾き始め、早い16分音符の美しいパッセージも加わって競演するようになっていたが、二人は互いに顔を見合わせて強弱を確認したり、頷くような表情でテンポを整えたり、互いに息のあったピアノを見せていた。続いて愛らしい第二主題を第一ピアノが弾き出しピッチカートの美しい伴奏も加わってピアノが終結のトリルに入ると、第二ピアノが相づちを打つように加わり、二つのピアノは重なるように進行して互いに速いパッセージを重ねながら目まぐるしく進み、いつの間にかオーケストラも加わって提示部の力強い終結の盛り上がりを示していた。



    展開部では最初の副主題を第一ピアノに続いて第二ピアノが続き、二つのピアノが互いに交替しながらオーケストラも加わって力強く進行しており、二台のピアノが発するダイナミックな迫力に満ちていた。この展開部は長大であり、映像では二人の顔の表情が二つの画面で並んで表示され、お互いを意識しながら演奏している様子がよく示されて面白かった。再現部では二つのピアノが提示部と入れ替わって弾かれていたが、第一主題の再現が簡単で、むしろ美しい第二主題の再現を丁寧に行っており、オーケストラも加わって二台のピアノが、火花を散らすような美しい場面もみせていた。最後のカデンツアでは、二台のピアノが登場したトリルの合奏で始まって二台のピアノが交互に競い合うように進む派手なモーツアルト自作のものを弾いていたが、ここでも二人の仲の良い息のあったピアノが示されていた。



    第二楽章はアンダンテの主題が悲しげなオーボエの伴奏によりオーケストラでゆっくりと優美に示されたあと、第一ピアノがトリルで伴奏している間をぬって第二ピアノにより実に美しく提示され、続いて二台のピアノにより装飾されながら対和風にそして並行的にゆっくりと進められ実にピアノのパッセージが美しい。特に後半には二つのピアノによる玉を転がすような部分があって、これはオーボエと二人が一体になって息を飲むように弾かなければ弾けないようにも思われた。中間部のエピソードでは二台のピアノのそれぞれにオーボエの悲しげなソロが加わって素朴な響きのする味わいのある面白い変化を見せていた。第三部では第一部よりも前半は縮小されていたが、後半の自由な展開の部分はむしろ拡大されており、二人の息の合ったピアノが美しく、またオーボエ協奏曲のような雰囲気すら感じさせる楽章でもあった。



   フィナーレは二つのエピソードを持つ大型なロンド形式であるが、速いテンポの活気のあるロンド主題がまずオーケストラで提示されフォルテで繰り返されてフェルマータの後、第一ピアノが新しい主題をテンポ良く弾きだし、続いて第二ピアノがオクターブ下で登場してきた。それからは、早いテンポでオーケストラと二つのソロが三つ巴の競演をし張り合うようにドンドンと進んでいた。第一のエピソードでは、付点のリズムの行進曲風な感じでオーケストラと二台のピアノが絡みあっており、ごく自然にロンド主題に戻っていた。第二のエピソードはトレモロ音形と三連符の旋律が二台のピアノでパートを変えながら絡みあって進むもので、二人の負けじとばかりに弾き進む熱のこもるった競演が快く響いていた。最後のカデンツアもモーツアルトのもので、後半は二人のダイナミックな合奏が展開された珍しい46小節の技巧的なものであった。



   演奏が終わると指揮者を中心に三人が並んで挨拶を繰り返していたが、指揮のノットは古楽器風の歯切れ良い指揮をする人で好感が持て、二人のピアノはテンポも歯切れも良く揃い、安心して楽しめる心暖まるものであった。画面は直ぐにコンサー・ミストレスのナタリー・チェーとの談話になり、エマールは以前に一緒に演奏したときは、自ら指揮をしていたが、彼はウイットに富んだ人なのでいつも楽しく演奏が出来、再会を楽しみにしていたと語っていた。タマラとは初めてであったが、レハーサルでは控えめであったが、本番では演奏が伸び伸びとして素晴らしく、エマールとの息も合っていたと語っていた。また、エマールは、カメラータとの協演は、彼等の演奏がレベルが高いばかりでなく音楽に対してとても真摯だから好きで、何かを固辞したり力を示したりはせずに、演奏の喜びを素直に伝えてくれる。昔ヴェーグと協演したときに強く印象づけられ、また協演できて非常に嬉しいと語っていた。



   また、続くセレナーデ第3番ニ長調K.185(167a)「アントレッター・セレナード」では、映像は、いきなり、第二楽章のアンダンテから開始されていた。    この楽章では、第一主題は全員の合奏で演奏されて始まるが、独奏ヴァイオリンは第二主題から登場しており、ナタリー・チェーが座ったままで、穏やかに美しい旋律を歌い上げていた。それ以降は協奏曲のように、独奏ヴァイオリンがリーダシップをとりながら最後まで活躍し、終わりには短いがカデンツアすら演奏されていた。






   フィナーレでは、アダージョの弦楽器によるゆっくりした序奏に続き、オーボエとトランペットの合奏もある珍しい序奏部があり、驚いて注目しているうちに、一転してヴァイオリンの主題による軽快なアレグロが始まった。第一楽章の快調な元気の良さに似た曲調で、ヴァイオリンで開始され、ソナタ形式に従って流麗に淀みなく進行する素晴らしく明るいアレグロの楽章で、多楽章のセレナードの締めくくりに相応しい軽快な曲となっていた。

   指揮者のジョナサン・ノットは、このHPでは初めて登場した見るからに若さを売り物にする指揮者らしく、オーケストラのカメラータ・アカデミカを完全に掌握しており、モーツアルト週間で常連になりつつある指揮者であった。古楽器奏法をモダン楽器のオーケストラで演奏させており、素晴らしく活きの良い指揮をして、どうやらモーツアルトを得意にしている様子であった。調べてみると、1963年のイギリス生まれで、1988年にイタリアでデビユーして以来、ヨーロッパの歌劇場で経験を積んでおり、04年には来日してN響を客演した経験もあるようだ。ハーデイングなどと同様に、最近ではベルリンPOやウイーンPOにも招かれて、高い評価を受けつつあるようである。

   久し振りでモーツアルテウムのグロッサーザールの映像を見た。私は2010年もこの会場でモーツアルトを聴いてきたが、この映像ではカメラワークが一段と向上しており、二台のピアノの二人のピアニストの表情や、二台のピアノの指の動きなどが、二台のカメラで同時に捉えられ、並んで写されているのには驚かされた。二人のピアニストが並んで、真剣な顔つきでピアノを競い合って弾く姿は、真に素晴らしい絵になっており、映像で見る音楽の楽しさを遺憾なく発揮してくれる曲であると思った。この映像は 新年の第一曲に相応しい充実したモーツアルトを聴かせてくれた。

(以上)(2011/01/05)


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