「モーツアルトの知られざる交響曲の真偽の如何はあなたの耳で!」


−前田二生指揮、新東京室内オーケストラ第18回定期公演、海老沢敏氏解説−


「ウイーン古典派の系譜将次櫺山擇砲けるオーストリアのアイデンテイテイ」   

 倉島 収(千葉県,K.449)


「モーツアルトの知られざる交響曲の真偽の如何はあなたの耳で!」

−前田二生指揮、新東京室内オーケストラ第18回定期公演、海老沢敏氏解説−

「ウイーン古典派の系譜将次櫺山擇砲けるオーストリアのアイデンテイテイ」


(曲目)1)ベート−ヴェン;序曲「命名祝日」作品115、モーツアルト;2)アダージョとフーガハ短調K.546、3)ホルン協奏曲第一番ニ長調K.412第一楽章アレグロ、第二楽章ロンド(未完)及びロンド(ジュスマイヤー補筆版)、4)モーツアルト(と記名);交響曲ニ長調、第一楽章アレグロ・アッサイ、第二楽章アンダンテ、第三楽章メヌエット・トリオ、第四楽章アレグロ・モデラート、5)イグナーツ・ブリュル;舞踏歌作品89ノ1、6)管弦楽のためのセレナード第三番作品67、


 「モーツアルト作曲」と記名された新しい「交響曲ニ長調」の世界初の初演をやると言うことを聞いて、そのコンサートに行ってきた。当日のプログラムのオットー・ビーバー博士の解説によると、モーツアルトの作か、同時代のザルツブルグの作曲家ヴェスターマイヤーの作か、どちらかのもののようであり、内容はレコード芸術4月号の「秘曲発見?真の作者はモーツアルトか」の記事とほぼ同様であった。当日の海老沢先生の解説によると、モーツアルトの曲なら初期の13曲のうち3曲が不明なので、そのどれかであるか、または当時の三流の作曲家ヴェスターマイヤーの作か、どちらかで真偽は調査中であるので、皆さんが真偽を判定して欲しいという楽しいコンサートであった。

 私の聴いた感じでは、第一・第二楽章はそれほど面白い曲ではないが、割に素直な曲であり、若い頃ならあってもよさそうな「らしい曲」に聞こえたので、前半は○とした。しかし残念ながら、第三楽章が下手くそなメヌエットであり、第四楽章も余り面白くなく、形式的にも整っていないので、後半は×ということにして提出してきた。私の知っている方々は、どうやら×とした方が多かったようである。

 この日に家に帰ると、この曲のことが NHKニュース10 で「新発見?モーツァルトの交響曲 ニ長調」という見出しでコンサートの様子を2〜3分紹介していたのを偶然目にした。そう言えば、私の席の直ぐ傍の通路で、NHKのハイビジョンカメラがあり、その曲だけを撮影していたようであった。真偽はまだこれからの調査によるとのことであるが、こうして世界に先駆けて、新曲が日本で初演されるというのは大変なことであったと思う。

 そのコンサートが、05年04月12日紀尾井ホールで開催された前田二生指揮による新東京室内オーケストラの第18回定期公演とされており、コンサートのタイトルは、「ウイーン古典派の系譜将次櫺山擇砲けるオーストリアのアイデンテイテイ」という難しい表題がつけられていた。コンサートの曲目の内容にオーストリア音楽史やオーストリアの音楽の展開に特有なものを命題として掲げ、命題に相応しい曲を例にしてコンサートの曲目が組み立てられている。そしてウイーン楽友協会のオットー・ビーバ博士の解説(海老沢敏翻訳)が付されていた。

 第一の命題は、「宮廷・皇室とのつながり」ということで、ベート−ヴェンの序曲「命名祝日」作品115を例にしている。この曲は、ベートーヴェンが皇帝フランツ一世の命名祝日用に作曲を始めたが、その日までに完成しなかったとされる。初めてきく曲で力強い曲であるが、力が入るだけで内容に乏しい曲であった。

第二の命題は、「対位法とフーガ」で、その例としてモーツアルトの「アダージョとフーガ」ハ短調K.546が演奏された。第三の命題は、「未完成の曲」であり、その例としてホルン協奏曲の第一番ニ長調K.412が取り上げられ、第一楽章アレグロに次いで第二楽章ロンドが未完の例として演奏され、さらにジュスマイヤー補筆版のロンドが引き続き演奏された。こうして比較しながら聴けることは、演奏会では少なく、面白い試みであった。

 第四の命題が「真作か贋作か」というテーマであり、冒頭に掲げたモーツアルト作曲と表紙に他人の手で記名された「交響曲ニ長調」が演奏されたものである。「モーツアルトの知られざる交響曲の発見の可能性を秘めて、その真偽の如何はあなたの耳で!」という試みである。この交響曲の筆写譜は、イシュルの町の旧家の遺品の中に、古い楽譜の膨大なコレクションがあり、オークションの結果ウイーン楽友協会資料館が入手している。その館長であるオットービーバ博士を中心に現在調査中であるが、日本でも後日ウイーンでも事前に演奏され、いずれ来年のモーツアルトイヤーで然るべく発表されるのではないかと期待される。

 第五の命題は「忘れられた作曲家」で、オーストリアのイグナーツ・ブリュルという作曲家の紹介があり、第六・第七の命題である「民俗音楽の影響」・「愛好されたセレナード」として、このブリュルの作曲した標記の2曲が演奏された。
 以上の通り、このコンサートは、オーストリアの音楽のアイデンテイテイを性格ずける命題を持ったコンサートであり、オーストリア大使館の後援がついた18回も重ねられたものであった。ウイーンで活躍する前田二生の指揮による新東京室内オーケストラは、ベースが2本で約40人の二管編成が取れるオーケストラであり、第18回となる定期公演で、しっかりとした指揮のもとに、まずまずの演奏を見せていた。

(以上)(05/04/21)



追伸;日本モーツアルト研究所(JMRI)懇親会のミニ報告、

    05年4月16日(土)新国立劇場レストラン・マエストロ、2:00〜4:30、



 上記コンサートと同じ週の週末に、海老沢先生主催の日本モーツアルト研究所(JMRI)の支持会員の懇親会「午後のお茶会」が初めて開催され、必ずこの新交響曲にまつわる話があるものと期待して出席してきた。ご案内によると、現在の支持会員は233名のようであるが、当日は50〜60名のようであった。出席者には、日本モーツアルト協会で顔見知りの方々、愛好会の方々、モーツアルテイアーデの方々、フェラインから2人など知った方が多く、イタリア・ワインのみ放題の軽食を取りながらの素晴らしい会合であった。

 海老沢敏・小川京子先生ご夫妻が、この研究所の所長・副所長であり、演奏部門と図書・情報部門で活動を開始したようである。演奏部門では、北海道教育大釧路分校の教授である塚田康弘(バリトン)さんが担当なされ、当日も新国立劇場オペラ研修所の皆さんによるミニコンサートがあって、アリア・二重唱など7曲が歌われた。今後は8月1日(月)18:00よりムジカーサ(代々木上原)で、「イタリアの響き」と題してイタリアのピアニスト、ジュゼッペ・ファウスト・モドウーニョの演奏と海老沢先生のお話が予定されている。図書・情報部門では安田和信さんと渡辺千栄子さんが担当されるそうであるが、当日は受付や準備で大変忙しそうであった。

 肝心の新シンフォニーについては、食事中に録音が演奏され、先生の解説があった。いろいろな曲を聞き込んでいる安田和信先生がモーツアルトの曲ではないと判断なさっており、先生も立場上口には出来ないが、違うようだというご意見のようであった。  しっかり頂いたイタリア・ワインのせいもあって、当日は素晴らしい「午後のワイン会」であったし、直ぐ傍で聴いた若いソプラノ国光智子さん・バリトンの与那城敬さんの声に迫力があり、ドンジョバンニの二重唱もアンコールの魔笛の二重唱もとても楽しかった。5000円会費なのに場所も内容も良く、主催の方々には大変のようであるが、今後もこの様な企画を続けて頂きたいと思った。

(以上)(05/04/22)



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