幻のピアノソナタ−−新全集の功罪−−


−モーツアルトのソナチネヘ長調を例にして−   

フェライン1月例会発表メモ、 

幻のピアノソナタ−−新全集の功罪−−

(モーツアルトのソナチネヘ長調を例にして)    倉島 収(千葉県)



1、モーツアルトの ソナチネヘ長調(K.547a、Anh.135)は、ピアノ初心者用のソナタ集に掲載され、ピアノを学習する人にとってはモーツアルトのソナタとして長らく愛されてきた。古くはギーゼキングのピアノ全集でも、ピアノソナタとして演奏されている。

   ところが、モーツアルト学者の研究が進み、自筆譜の校閲が厳密化された産物である新全集では、この曲はピアノソナタ分類から除外され、今では、初心者のためのヴァイオリンソナタK.547に分類されている。確かに、モーツアルトは、1786年にヴァイオリンソナタを作曲し、彼の自筆作品目録にやさしいソナタとして記載している。一方では、ピアノソナタとしてのこの曲は、ピアノだけのオリジナルが明確でなく、他人の写譜しか無いと言うことから、ヴァイオリンソナタのヴァイオリンを除いたピアノだけのパーツは、疑問の作品として扱われるようになった。本人の自筆譜が判然としないが故の出来事である。

2、その結果、現在では、この曲は、CDや演奏会において、ピアノソナタとして弾かれることは殆どなくなり、また、ヴァイオリンソナタとしても、易しい初心者用の曲なので、心あるヴァイオリン奏者以外には殆ど弾かれることがない曲になってしまった。この曲が大好きで、ソナチネとして、頭の中に刷り込まれているピアノ愛好家にとっては、今やこの曲は、モーツアルトの「幻のピアノソナタ」となってしまった。いずれ初心者用のソナタやソナチネ集にも校閲の手が及ぶ筈であるので、初心者にも弾かれることがなくなることを、心から危惧している。


3、例会当日の試み、−−幻のピアノソナタを聴く−−

(1)江端津也子さんによる演奏、

(2)ヴァイオリンソナタとしての演奏、(V;I.Keulen、P;Brautigam)

(参考)
 同じようなケースは、フルート協奏曲第二番ニ長調K.314(285d)(マンハイムで作曲)がそうであり、新全集でこの曲がオーボエ協奏曲ハ長調K.314(285d)(ザルツブルグで作曲)と改められたため、最近この曲をフルート奏者が余り弾かなくなっている。

  (以上)(2003/1/16)



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