イドメネオ8映像の総括−ウイーン版の薦め−

−モーツァルテイアン・フェライン発表を終えて−


イドメネオ8映像の総括−ウイーン版の薦め−フェライン発表を終えて−


  今回のこのテーマに関しては、4月に日本モーツァルト協会のオペラ・サークルで、一度講演済みであったので、 季刊掲載用の形で資料も出来ており(資料-1)、突然の講師依頼を気軽に引き受けたのであるが、講演の相手が変わると、このオペラの成立事情や「あらすじ」などの追加資料(資料-2)を作成する必要に気がついて、この資料作成に追われて大慌てであった。

  初めに早口で、これらのこのオペラの基礎的部分の資料説明をしてから、8映像の簡単な説明を加え、これまでは「ミュンヘン初演版」が優勢であったことを述べた。それから、本題のウイーン版の追加アリアを聞いて頂いたり、レヴァイン・ポネル盤の決定的場面における問題点などを映像で見て頂いたりしてから、休憩後に、時間の許す限りキュヴィリエ劇場のケント・ナガノ盤を抜粋して見て頂いた。終わりに、自分なりのこのオペラに対する今後の期待について述べたさせて頂いた。



   ウイーン追加曲の2つのアリア、K490のテノールのロンドとK489のソプラノとテノールの二重唱は、エストマン指揮ドロットニングホルム歌劇場で歌った本格的なテノールであるキューブラーが歌った古楽器の映像(1991)で聴いて貰った。ハンペ演出のこのウイーン版は、小劇場のセリア的雰囲気がとても良いのであるが、エストマンのテンポが気まぐれで、早すぎる面があって好みが分かれるところである。ヴァイオリンのオブリガート付きのK.490は、あのピアノのオブリガートの名曲K.505と「同工異曲」の対をなすモーツァルトの傑作中の傑作であり、優れた名品として改めて評価して欲しいと思われる。

  また、第三幕の決定的な場面である第9場と第10場の「声」の場面では、初めに「ミュンヘン初演版」のレヴァイン・ポネル盤(1982)における問題点として第10場のイリアのレチタティーボの部分が省略されている例を見て頂いてから、同じ場面を「ウイーン版」であるハイテンク・ナン盤(1983)で見て頂いた。この盤ではイリアのイヴォンヌ・ケニーがとても味のある演技をしており、第10場では雄弁になってイダマンテの身代わりに、ネプチューンへの生贄として身を投ずるシーンが素晴らしく、「愛の勝利だ」と言わせる「天の声」を導き出す「父子の愛」に加えて「男女の愛」の重要性を物語っていた。この決定的な場面では、男女の愛を自然に訴えるウイーン版の方が遙かに優れていると思われる。

  休憩後には、ウイーン版では最も新しいケント・ナガノ盤(2008)で、まず改装なった新劇場を見るため序曲から聴いて頂いたが、序曲の間中、舞台では合唱団と将軍イドメネオのトロイ戦争での勝利、続いてネプチューンによるイドメネオが海難に遭う場面が示されていた。この映像は、「初演劇場でのライブ収録」と言うことで、何か新しいモダンな面を演出せざるを得なかったようであるが、モダンな衣裳の合唱団がやり過ぎの面があること、折角のウイーン版であるのにあのK.490が省略されていたり、末尾の折角加えたバレエの物足りなさなど、私には音楽面では良いのであるが、演出面で好きになれない面があった。しかし、イリアのユリアーナ・バンスやエレットラのアネッテ・ダッシュの好演などがあって、第三幕での声の場面などがウイーン版らしく盛り上がりを見せる場面を見て頂いた。

   そして最後に自分の望ましい「イドメネオ」像を一言、語らせて頂いたが、それはウイーン版でイダマンテをテノールで歌わせ、8つの映像の良いとこ取りをした、オペラ・セリアの枠を遙かに超えるフランス風のグランド・オペラの先駆けのイメージであった。またさらに、新全集の付録にある映像ではまだ見られないイダマンテのアリア(27a)、パバロッテイしか歌っていない削除アリア(30a)など作曲した全てのアリアを加える一方、往復書簡で彼が長過ぎると指摘したレチタティーボの部分を大幅にカットして、題名もこの際「イリアとイダマンテ」と改名した新しい「新ミュンヘン版」とも言うべき改変などへの可能性を述べさせて頂いた。ウイーン版と同様に、アマチュアの演奏会形式でも実現できないかと思っているが、新全集を書き替える必要があるので、これは夢物語で無理であろう。しかし、これこそモーツァルトがこのオペラで本当にやりたかったことであろうと考えられる。

   終わりに、当日、名古屋から例会に参加して下さった加藤さんというオペラ好きの方が参加して下さり、早速、フェラインに入会して下さった。ご本人は、私と異なって、ミュンヘン初演版でイダマンテはメゾ・ソプラノかカウンター・テナーで歌うのが筋であると主張なさっていたが、新しい論客が増えたことを歓迎したい。また、本日は、手元の8映像の総括であったが、1970年のBBCのTV用映像であるブリテン・ピアーズ・シリーズの「イドメネオ」を新たに入手したので、早速、6月号でアップすることにしている。



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